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京都──洛中洛外図と障壁画の美

2013年11月15日号

会期:2013/10/08~2013/12/01

東京国立博物館[東京都]

「京都でも見ることのできない京都」を謳い文句にした特別展。会場に入ると、いきなり4面の巨大スクリーンにこれから見る作品がドアップで映し出される。おいおい最初に見せるなよ。次の展示室には4件の「洛中洛外図屏風」が並ぶ。「上杉本」「歴博乙本」「舟木本」「勝興寺本」で、後期には東博の「舟木本」以外展示替えされる。これだけそろうと壮観で、いろいろ気づくことがある。まず、どれも金雲によって京の街が半分くらい隠れていること。前々から金雲や霞は空間を曖昧にすることで日本の絵画から構築性を奪う元凶だと思っていたが、とりわけ歴博乙本は半分以上が雲に隠れてしまって、さすがにやりすぎだろ。でも狩野永徳筆の上杉本は金雲がデザイン的にうまく処理されていて、やっぱり国宝だけのことはある。しかしいちばん華やかなのは岩佐又兵衛筆の舟木本で、祇園祭や遊女歌舞伎など色彩も鮮やかだし線描も艶やか。ところで、洛中洛外図には西洋的な遠近法が使われておらず、建造物は水平線と斜めの平行線で表わされるが、この斜めの線が作品によって右上に向いていたり左上に向いていたり一定してないのだ。カタログを見ると歴博甲本、舟木本、勝興寺本、池田本は左上、歴博乙本、上杉本、福岡市博本は右上とバラバラ。これはなにか意味があるんだろうか。もちろん画家が見た角度によって左右が決まるはずだが、これらは実際に見て描いたわけじゃないし、たんなる画家の気まぐれか。さて、京都御所の障壁画を通り抜けて次の展示室に入ると、またもや幅20メートル近い巨大な横長スクリーンに映像が映し出されている。龍安寺の石庭を定点観測的に撮影したもので、石庭そのものは変わらないが、塀の向こうの木々が四季折々変化していくのがわかる。春は中央に2種の桜が咲き、夏は緑におおわれ、秋は左右の紅葉樹が赤と黄色に色づき、冬は葉が落ちて雪が積もるという具合に、じつに巧みに色彩が配されているのだ。知らなかった。最後は二条城の障壁画。二の丸御殿黒書院一の間、二の間、大広間の四の間の襖や壁画をごっそり引っぺがして陳列ケース内に再現している。ムチャしよるなあ東京人は。

2013/10/16(水)(村田真)

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