artscapeレビュー
上海博物館──中国絵画の至宝
2013年11月15日号
会期:2013/10/01~2013/11/24
東京国立博物館[東京都]
リニューアルオープンした東洋館の4階で開かれているのだが、なぜかエレベーターは4階に止まらない。仕方なく5階まで上って階段を下りるが、フロアは平坦でなく奥の4.5階みたいなところでやっていたのでわかりづらかった。東洋館てこんなに広かったっけ。中国絵画の展示は宋・元から明・清までの40件。それほど大きな展覧会ではないが、けっこうおもしろかった。五代(10世紀)の《閘口盤車図巻》は、水門の施設を描いた図。いわゆる遠近法ではなく、水平線と斜めの平行線で成り立っているのは洛中洛外図と同じだが、日本のように霞や金雲で細部をごまかしたりせず、空間的に辻褄が合うようにきちんと描いていて、まるでレオナルドの描いた精緻な設計図のようだ。山水画も日本より綿密に描き込んである。湖を俯瞰した南宋(13世紀)の《西湖図巻》は雪舟の《天橋立図》に先駆けてるし、同じく南宋の山水画《渓山図巻》は《モナ・リザ》の背景とよく似てる。トゲトゲしい樹木を描いた元(14世紀)の《枯木竹石図軸》などは、グリューネヴァルトを予感させずにはおかない。もちろんどれも中国のが早いといいたいのだ。圧巻は、明(17世紀)の《山陰道上図巻》。波打ち、のたくり、蠕動するシュールな山々が8メートルにわたって描かれているのだ。山水画は西洋の風景画に対応するといわれるが、じつはまったく異質なもので、なにか大地に宿る生命みたいなものを感知し視覚化する術だったのではないか。
2013/10/16(水)(村田真)