artscapeレビュー
VOCA 2013:現代美術の展望──新しい平面の作家たち
2013年04月15日号
会期:2013/03/15~2013/03/30
上野の森美術館[東京都]
VOCA展も今年20回目を迎えた。そのため同館ギャラリーと第一生命ギャラリーでは20年間のVOCA賞作品を展示し、あわせて記録集も出している。その受賞作品を通覧すると、この20年間で着実に「VOCA的」と呼んでもいいようなスタイルが形成されてきたことがわかる。具体的にいえば、抽象画でもリアリズム画でもなく、華やかな色彩で筆触を強調した具象イメージのパッチワーク、といったところだ。これはしかしVOCAに限らずいまどきの絵画全般の傾向だが、VOCAがその傾向を先導し、また拍車をかけていることは間違いない。受賞作品の傾向が毎回コロコロ変わるのも困りものだが、これほど「VOCA色」が鮮明化してくるとみずから首を絞めることになりはしないか。その立役者というか元凶ともいえるのは20年間ほぼ固定席と化した4人の選考委員だろう。別に彼らが悪いわけではないけれど、20年を節目にメンバー全員入れ替えたらまた新鮮な平面作品に出会えるはず。毎回カタログに掲載される「選考所感」もマンネリ気味だし。さて本展。今年VOCA賞を獲得した鈴木紗也香の作品は、先に述べた「VOCA的」絵画の典型といえる。が、それだけでなく、「内と外」をテーマに窓や室内や画中画などを描いているせいか、画面空間が複雑な重構造になっていて目を喜ばせてくれるのだ。奨励賞や佳作賞は、柴田麻衣、平子雄一、大崎のぶゆき、吉田晋之介、佐藤翠の5人で、映像の大崎を除き、いずれも筆触を強調した半具象絵画という点でVOCA的だ。それはいいとして、気になるのは彼ら全員が複数のキャンバスやパネルにひとつの画面を切れ目なく描いていること。描かれた画像に切れ目はなくても物理的に合わせ目(垂直線)が見えてしまい、それが気になるのだ。画面が巨大だから複数のキャンバスを使うのはわかるが、それなら線を消すか、逆に線を画像に組み込むかするべきだ。またこれとは別に、加茂昂や小谷野夏木ら、異なるイメージを描いた複数のキャンバスを組み合わせて1点の作品として見せる試みも目についた。
2013/03/21(木)(村田真)