artscapeレビュー
現代への扉 実験工房展──戦後芸術を切り拓く
2013年04月15日号
会期:2013/01/12~2013/03/24
神奈川県立近代美術館鎌倉+鎌倉別館[神奈川県]
実験工房は、戦後まもない50年代に活動した先端的な総合芸術のグループ。顧問の瀧口修造をはじめ、山口勝弘、駒井哲郎、福島秀子、武満徹、湯浅譲二、秋山邦晴と名前を列挙するだけでもすごさがわかる。にもかかわらず、少し遅れて関西で活動した具体美術協会と比べて評価も知名度も低い。それはなぜなのか、この展覧会を見てよくわかった。実験工房は音楽の占める割合も大きかったので、具体のようにアンフォルメルやアクション・ペインティングといった視覚的にインパクトのある大作を残さなかったからだ。いっちゃ悪いが、具体は頭を使う前に体を動かすというイメージがあるのに対し、実験工房はもっと知的に洗練されていた印象がある。あくまで印象だが。それに具体のリーダー吉原は関西商人らしく商売上手、宣伝上手だったのに対し、実験工房の瀧口はとても控えめのインテリだったから、あまり社会に浸透しなかったのかもしれない。いずれにせよ、展覧会にしてしまうと実験工房は見るべきものが少なく、具体の圧勝だ。そういう具体も後の再制作が多いが。ところで、別館で上映されていた松本俊夫の自転車の映像は、なにか心をくすぐるものがあるなと思ったら、円谷英二が特撮を担当したという。なるほど、自転車や車輪がぎこちなく宙を舞う奇妙な浮遊感は、のちの怪獣映画やテレビのウルトラマンシリーズなどに見られる中途半端な浮遊感に通じるものだ。
2013/03/15(金)(村田真)