artscapeレビュー
レオナルド・ダ・ヴィンチ「美の理想」
2012年04月15日号
会期:2012/03/31~2012/06/10
Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]
日本で「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」を成り立たせるには作品が1点あれば十分で、あとは周辺画家の作品や関連資料を集めてお茶を濁すのがフツーだが、今回はなんと3点も来ている。ただし3点とも習作みたいなモノクロームの小品だ。というといかにもショボく聞こえるかもしれないが、じつのところほかの画家の手が入ってるかもしれない大作より、こちらのほうがレオナルドの息づかいや手の痕跡が認められ、むしろありがたみが感じられるというものだ(そもそもレオナルドは《モナ・リザ》に代表されるように、描くことの痕跡を極力消そうとした画家だ)。とくに今回は目玉の《ほつれ髪の女》より、2点の《衣紋の習作》に惹かれるなあ。ほかにレオナルドの筆が入っている可能性が高い《岩窟の聖母》、弟子サライが師匠の絵を参考にして描いたとされる《聖母子と聖アンナ》、そして彫刻版やヌード版を含め20点にもおよぶ《モナ・リザ》のヴァリエーションなど、ミステリーじみた来歴もあってなかなか楽しめる。
2012/03/30(金)(村田真)