artscapeレビュー

杉本博司「ハダカから被服へ」

2012年04月15日号

会期:2012/03/31~2012/07/01

原美術館[東京都]

最近ものすごいペースで飛ばしてる(でも本人は涼しい顔の)杉本博司だが、今回選んだテーマは「ハダカから被服へ」、つまり衣服。これはシャネル、サンローラン、川久保玲などのファッションを撮りためた「スタイアライズド・スカルプチャー」シリーズを中心とする展示だが、もちろんそれだけでは済まないのが杉本だ。衣服をテーマにするとは、いってみれば人類の歴史を振り返ること。そこまで大風呂敷を広げ、「ジオラマ」シリーズから「猿人」や「ネアンデルタール」、「肖像写真」シリーズから「マリー・アントワネット」や「ヘンリー8世」なども出る。いや写真ばかりではない。「杉本文楽曾根崎心中」のための人形と衣装や雷紋の能衣装といった自作の舞台装束、18世紀の女性の解剖図や戦前の「千人針」を描いた日本画など、彼自身の美術コレクションも出品される。その活動の多彩さと悪趣味スレスレの趣味のよさ(?)には舌を巻くが、それを「衣服」という1点に集約し並べ替えてしまう応用力(鷹揚力でもあるだろう)には驚かされる。でも杉本氏によれば、今回いちばん力を入れたのは庭の垣根だそうだ。なんだか粋な職人化しつつあるなあ。

2012/03/30(金)(村田真)

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