2021年10月15日号
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artscapeレビュー

RYUGU IS OVER!!──竜宮美術旅館は終わります

2012年03月15日号

会期:2012/02/17~2012/03/18

竜宮美術旅館[神奈川県]

ラブホ、というより連れ込み旅館というにふさわしい昔ながらのたたずまいを誇る竜宮美術旅館。この3月、日ノ出町駅前再開発のため取り壊されるこの珍妙な建築全館を使って、10人以上の若手アーティストがインスタレーションを繰り広げた。キュレーターはサラリーマンコレクターとして知られる宮津大輔氏。取り壊しを待つ建物での展覧会というのは、たいてい現状復帰しないでもいいことが多いためやり放題できて楽しいものだ。ゴードン・マッタ・クラークやPHスタジオは解体前の家を真っ二つにしたし、遠藤利克は同潤会アパートで水道を出しっぱなしにして部屋を水浸しにしたものだ。最近の若いアーティストはそこまではしない。お行儀がいいというか、ハデなインスタレーションを避けたがるというか。絵や彫刻みたいなブツとしての作品にこだわる面もあるんだろう。例外は丹羽良徳と狩野哲郎だ。丹羽はこれまで物置として使われていた開かずの間にビデオを展示。Mくんの部屋みたいに雑然とした薄暗い空間に、3台のモニターが妖しい光を放つ。そのビデオも、キオスクで買った雑誌を本屋に持ち込んでもういちど購入するという挑発的なもの。内容も場所も自閉的・変態的でとてもいい。狩野は部屋の窓を開け放ち、畳を一部はがして植物やロープやホースなどを張り巡らしている。寒風の吹き込む部屋は内とも外ともつかぬ開放空間になっていた。あとは、いつもコーヒーの香り漂うキッチンの壁にコーヒー液で描いた浅井裕介のドローイング、色鉛筆を固めて削った彫刻を玄関の把手にすり替えた八木貴史のインスタレーション、その上のガラス窓に真っ赤な金魚を泳がせた志村信裕の映像などがすんばらしい。それにしても取り壊されるのは惜しい建物だ。

2012/02/20(月)(村田真)

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