artscapeレビュー
ザ・タワー──都市と塔のものがたり
2012年03月15日号
会期:2012/02/21~2012/05/06
江戸東京博物館[東京都]
高所恐怖症にもかかわらず高いところに上ったり見下ろしたりするのが大好き、という心理は自分でもよく理解できないが、とりあえず新しい街を訪れたらいちばん高いところに上ってあたりを睥睨することにしている私にとって、この展覧会はとても興味深いものだった。まず、アタナシウス・キルヒャーによる「バベルの塔」の図から展示が始まっていて、趣味のよさを感じさせる。が、あとはエッフェル塔、浅草凌雲閣(十二階)、通天閣、東京タワーの4つを中心とした展示で、なにかものたりない。なにがものたりないんだと思ったら、いまはなきWTCも最新のブルジュ・ハリファも出てないからだ。もちろんこのふたつは超高層ビルであってタワーではないのだから、出てなくても不思議はないのだが、でも砂漠に屹立するブルジュ・ハリファの姿はバベルの塔そのものだろ(ドバイのバブルの塔でもあった)。話が飛んだ。元に戻すと、物件としてはものたりなさを感じるけど、内容的には十分満足のいくものだった。とくにエッフェル塔のあの形態がどのように発想されたかを伝える初期のドローイングや、次の万博(1900)のために考えられたエッフェル塔改造計画、描く人によって微妙に異なる凌雲閣の先細り度、東京タワー建設中の写真や完成まもないころの展望台から眺めた風景写真など、興味深い展示が多い。で、最後はもちろんこの5月に開業する東京スカイツリーの紹介。
2012/02/20(月)(村田真)