artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
内藤礼 展
会期:2011/09/16~2011/12/04
佐賀町アーカイブ[東京都]
次、いまや伝説の佐賀町エキジビット・スペース(1983-2000)の活動を検証する佐賀町アーカイブへ。内藤はちょうど20年前の1991年に佐賀町で「地上にひとつの場所を」を開催。そのときのドローイングを中心に展示している。それにしても90年前後の佐賀町はすごかったなあ。森村泰昌に杉本博司、堂本右美、それにキーファーまで展覧会やってたからな。バブルだったから実現できた面はあったにしろ、主宰者の小池一子さんの洞察力と実行力にはあらためて脱帽する。
2011/11/05(土)(村田真)
平川恒太「豊かな絵画と、豊かな世界」
会期:2011/10/14~2011/11/06
バンビナートギャラリー[東京都]
今日は8歳の息子とその母と一緒にガラクタをかついで3331のかえっこバザールへ。ついでに3331内のギャラリーを訪問する。まずはバンビナート。ここは若い作家が中心で、だいたい物語性の強いカラフルな絵画が多い。たまたまぼくが訪れたときそうだっただけかもしれないが。平川も物語性の強い作品が多く、今回は小さな水玉やキラキラ輝くラメなどを用いて、着ぐるみをかぶった人のいる風景を描いている。なんかよくわからないけど意味深だなあ。このぬいぐるみは鹿とキツネの2種類の実物があって、これを着てパフォーマンスもするのだという。ほかにも電車のなかに絵を持ち込んで乗客に見せる「電車展」を開いたり、千葉県鴨川市のお寺にツアーする「アートが山をのぼること」を企画したり、なかなかおもしろい動きをしているアーティストだ。
2011/11/05(土)(村田真)
彫刻の時間──継承と展開
会期:2011/10/07~2011/11/06
東京藝術大学大学美術館[東京都]
芸大のコレクションを中心とした彫刻の企画展。三つの展示室を、飛鳥から江戸時代までのおもに木彫、明治から昭和前期までの近代彫刻、そして芸大教官たちによる現代作品に分けている。いちばん古いのが7世紀後半の木造と銅造による仏像で、そのうち《菩薩立像》は重要文化財。芸大らしいのが、足下以外は芯だけしか残ってない《興福寺十大弟子像心木》で、これは鑑賞のためではなく保存修復の教育用のコレクションだろうが、その不在感・欠落感が現代の抽象彫刻を思わせる。「近代」の入口には平櫛田中による岡倉天心像《五浦釣人》が立っているが、なんと背中向き。なるほど背中には抽象的な波模様が彫られていて、それ自体が鑑賞に値する彫刻と見ることができる。日本の近代彫刻というと地味という先入観があるが、じつはこのセクションがいちばんおもしろい。「木のナマズ」というより「ナマズの木」と呼びたい高村光太郎の《鯰》、鹿の骨で小さな骸骨を彫った旭玉山の《人体骨格》、工芸(人形)と彫刻のあいだを行ったり来たりしているように見える平櫛田中の一連の木彫など、興味深い作例が多いが、圧巻は橋本平八。様式化された人体の表面に花柄模様を彫った《花園に遊ぶ天女》、石の塊を木で彫った《石に就いて》(ひとまわり小さい原石つき)など、古代エジプトから現代のコンセプチュアルアートまで古今東西の彫刻史すべてを包含するような驚くべき仕事であった。ところが現代になると、素材もテーマも技法も多様化し、彫刻をめぐる問題も拡散してしまったかのようでつまらなくなる。近代彫刻の問題を、サブタイトルにあるように「継承」「展開」しているのは、原真一と森淳一くらいではないか。
2011/11/04(金)(村田真)
ゴヤ──光と影
会期:2011/10/22~2012/01/29
国立西洋美術館[東京都]
地下2階の企画展示室に入ると、さらに下のギャラリーへと導かれる。「光と影」の画家ゴヤにふさわしい趣向だ。この奈落の底で晩年の自画像と初期のタペストリー原画を見てから再び地下2階に戻るのだが、その後は版画と素描がずらりと並び、油彩は数えるほどしかない。もちろん《着衣のマハ》や、ゴヤ特有の浮遊する人物を描いた《魔女たちの飛翔》、筆のタッチも生々しい《ガスパール・メルチョール・デ・ホベリャーノスの肖像》をはじめとする肖像画群も見られたが、出品作品123点のうち油彩が約5分の1の25点というのは少なすぎないか。とくに後半はほとんど版画と素描に占められていてウンザリする。もちろん版画も素描も重要だけど、それらは暗い照明の下で歩きながら見るより、家で画集を見ればいいのだ。大々的に40年ぶりの「ゴヤ展」を謳うなら、もっと油彩画を借りてきてほしかったなあ。だいたい「プラド美術館所蔵」と銘打ちながら西洋美術館の版画が45点も出てるのだから、ありがたみが薄い。長崎県美術館と東京富士美術館からの各3点を加えれば50点以上が国内の所蔵品だ。40年前に同じ西洋美術館で見たときは、まだ企画展示室はおろか新館もできておらず、ル・コルビュジエ設計の本館しかなかった。それでも着脱2点のマハをはじめ油彩39点が来ていた。ハコは飛躍的に拡充したのに、肝心の作品が保険金高騰もあって来れないのではどうしようもない。今回の大震災と原発事故でますます海外から作品の貸し出しが難しくなるだろうなあ。
2011/11/04(金)(村田真)
TARO LOVE展──岡本太郎と14人の遺伝子
会期:2011/10/25~2011/11/06
西武渋谷店A館7階特設会場[東京都]
ほとんど話題にならなかったけど、こんな展覧会やってたんだね。生誕100年の岡本太郎の遺伝子を受け継ぐアーティストたち、ということで太郎の孫の世代の会田誠、青山悟、淺井裕介、風間サチコ、山口晃らが出品。山口の《山愚痴屋澱エンナーレ》が冴えている。旧作が中心だが、日本画と西洋画の遠近法を逆転させたり、「絵画はこんなに役に立つ」と称してキャンバスを木枠から外してたき火にしたり、河原温の《日付絵画》をカレンダーにしたり、アイディア満開。会田と青山はデビュー前の初期の作品を開陳してるし、風間は移動式立体版画(?)を出している。たとえ旧作で完成度が低くても、ほかではあまり見られない実験的作品が多く、なんかトクした気分。三潴末雄氏と中世古佳伸氏のキュレーションがしっかりしているのだろう。苦情が来たため会期なかばで中止するという暴挙に出た今年初めの「シブカル展」の名誉を回復するためにも、渋谷西武はもっと宣伝すればよかったのに。いや、宣伝してまた苦情が来るのを恐れたか。見逃してしまったが、店内のエントランスや通路など数カ所でも荒神明香や若木くるみらの作品が展示されていたらしい。残念。
2011/11/03(木)(村田真)