2020年11月15日号
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artscapeレビュー

彫刻の時間──継承と展開

2011年12月15日号

会期:2011/10/07~2011/11/06

東京藝術大学大学美術館[東京都]

芸大のコレクションを中心とした彫刻の企画展。三つの展示室を、飛鳥から江戸時代までのおもに木彫、明治から昭和前期までの近代彫刻、そして芸大教官たちによる現代作品に分けている。いちばん古いのが7世紀後半の木造と銅造による仏像で、そのうち《菩薩立像》は重要文化財。芸大らしいのが、足下以外は芯だけしか残ってない《興福寺十大弟子像心木》で、これは鑑賞のためではなく保存修復の教育用のコレクションだろうが、その不在感・欠落感が現代の抽象彫刻を思わせる。「近代」の入口には平櫛田中による岡倉天心像《五浦釣人》が立っているが、なんと背中向き。なるほど背中には抽象的な波模様が彫られていて、それ自体が鑑賞に値する彫刻と見ることができる。日本の近代彫刻というと地味という先入観があるが、じつはこのセクションがいちばんおもしろい。「木のナマズ」というより「ナマズの木」と呼びたい高村光太郎の《鯰》、鹿の骨で小さな骸骨を彫った旭玉山の《人体骨格》、工芸(人形)と彫刻のあいだを行ったり来たりしているように見える平櫛田中の一連の木彫など、興味深い作例が多いが、圧巻は橋本平八。様式化された人体の表面に花柄模様を彫った《花園に遊ぶ天女》、石の塊を木で彫った《石に就いて》(ひとまわり小さい原石つき)など、古代エジプトから現代のコンセプチュアルアートまで古今東西の彫刻史すべてを包含するような驚くべき仕事であった。ところが現代になると、素材もテーマも技法も多様化し、彫刻をめぐる問題も拡散してしまったかのようでつまらなくなる。近代彫刻の問題を、サブタイトルにあるように「継承」「展開」しているのは、原真一と森淳一くらいではないか。

2011/11/04(金)(村田真)

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