artscapeレビュー
昭和館/遊就館
2015年03月15日号
昭和館/靖国神社遊就館[東京都]
九段で《昭和館》(菊竹清訓、1999)と《遊就館》(同、1882)の展示を見る。前者は戦中と戦時の暮らしを紹介し、後者は戦争博物館+慰霊の施設だが、いずれも受動的に戦争になったというか、主体なき自然災害のようだ。誰がなぜ戦争を起こし、なぜ悪化しても止めずに継続したかの視点がない。昭和館は、菊竹清訓のデザインらしく、持ち上げたヴォリュームであり、最上階までエレベータで一気に上がるという動線だ。まず7階が戦中、そして階段を降りるところで玉音放送、6階が戦後の公団の頃まで、という展示構成だ。ただ、エレベータのドアが開いて、いきなりトリックアートによる廃墟の絵が出迎える新規コンテンツは、これでよいのか? とはいえ、当時の映像ニュースの資料が多く、さまざまな情報を読みとれる。遊就館の展示手法は、以前より洗練された感じがした。が、いきなりプロパガンダの映像である。反米はともかく、日本は悪くなかった、正しい戦争だったことを主張する。なるほど、靖国神社のイデオロギー的な機能を「正しく」補完する内容だ。これ以外にも日本近代史の充実した博物館があるとよいのだが。最後の残された母が亡くなった息子に送る花嫁人形が哀しい。
写真:上=昭和館(左)と九段会館(右) 中=遊就館 下=昭和館の展示
2015/02/25(水)(五十嵐太郎)