artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

Boundary Window / 躯体の窓

[千葉県]

津田沼にて、若手建築家の増田信吾+大坪克亘が設計した《躯体の窓》(2014)を見学する。最大の特徴は、建物よりも窓が大きいことだが、外構やインテリアにこだわりをもち、自分である程度の施工も出てきてしまう施主とのやりとりから、奥行きはないが、窓という「敷地」を発見し、そこから空間を構成したものだ。また集合住宅のリノベーションだからこそ起きる不思議なデザインが随所に発生する。さらに、カメラマンの施主によるハウス・スタジオがかもしだすロマンティックな雰囲気が融合し、夢のような空間がつくられた。

2014/11/10(月)(五十嵐太郎)

宇野享 / CAn | Susumu Uno「-ing」展

会期:2014/10/31~2014/11/24

Gallery Nica[愛知県]

名古屋の大須へ。ハセビル8の2階Gallery Nicaの宇野享/CAn「-ing」展を見る。この建物は、宇野自身が設計したものであり、内部をジグザグに階段が貫き、立体街路を歩くような雰囲気だ。また2、3階の壁面が外にはりだし、下に向けて大きな開口をとるために、前面道路と密なコミュニケーションを生む。展覧会は、ガルウィングハウスから現在進行形の公共プロジェクトまでの作品の軌跡をたどる。単体の建築でも自律したものと考えるのではなく、無限に続く全体の一部として構想し、ユニットの展開可能性を意識したデザインへの一貫した関心が、展覧会の形式だからこそ明快に伝わる。

展示風景


2014/11/09(日)(五十嵐太郎)

舟越保武彫刻展 ─ まなざしの向こうに ─

会期:2014/10/25~2014/12/07

岩手県立美術館 企画展示室[岩手県]

日本設計が手がけた《岩手県立美術館》(2000)を見学する。ちょっと古典的なデザインだが、いい空間である。地元出身の船越保武展を開催中だった。白眉の作品は長崎26聖人殉教者記念像(今井兼次も登場する記録映像もあり)だが、脳梗塞で倒れた後、左手だけで制作し、優美な造形ではなくなった晩年の作品が鬼気迫る。常設は萬鐵五郎、松本竣介など、やはり地元作家が充実している。盛岡市先人記念館も、国際連盟事務次長にまでなった新渡戸稲造、アイヌ叙事詩ユーカラを研究した言語学者、金田一京助など、内容が興味深い。情報化時代以前の彼らの志しの高さを見ると、現代が劣化しているのではないかと不安になる。

盛岡市先人記念館

記事左上:岩手県立美術館

2014/11/07(金)(五十嵐太郎)

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《もりおか歴史文化館》《旧岩手県立図書館》《旧盛岡銀行(現岩手銀行中ノ橋支店)》

[岩手県]

菊竹清訓による《旧県立図書館》(1967)がリノベーションされ、2011年にオープンした《もりおか歴史文化館》(2011)を訪れた。以前とはだいぶ空間の雰囲気が変わったが、それでも60年代の建築が残ったことは良かった。歴史資料を用いた企画展「あの日あの時の盛岡4 ─馬のいた風景─」ほか、常設における盛岡の歴史など、想像以上に展示が面白かった。辰野葛西の事務所による明治末の《旧盛岡銀行》(1911)は、現在保存の工事中で、角地の玄関だけ見えるが、全体を覆い、クリストのインスタレーションを彷彿させる。

もりおか歴史文化館

2014/11/07(金)(五十嵐太郎)

ルツェルン・フェスティバル「アーク・ノヴァ」2014 in 仙台

会期:2014/11/01~2014/11/09

アーク・ノヴァ仙台会場[宮城県]

昨年松島で取材した磯崎新×カプーアの「アーク・ノヴァ」が、今年は仙台の勝山館隣で開催され、能舞台を鑑賞した。やはり、前は倉木麻衣が歌う舞台だったので、赤い心臓のような空間が鼓動を打つ感じとは、全然雰囲気が違う。空調が十分に効かないため、去年10月はまだ会場が暑かったが、11月になると、ちょうどいい。

2014/11/05(水)(五十嵐太郎)