artscapeレビュー

名和晃平─シンセシス

2011年07月15日号

会期:2011/06/11~2011/08/28

東京都現代美術館[東京都]

2003年、筆者が審査員をつとめたキリンアートアワードで彼が受賞したとき(当時はまだ食えなくて、バイトをやっていた)、受賞展を担当していたので、ついに都現美で個展を開催したことは感慨深い。これまで見てきた懐かしい作品のほか、「PRISM」のシリーズは当初に比べて、さらに精度に磨きをかける一方、新しく二重化のモチーフが出現し、情報化時代の造形のあり方の先端を切り開く。また各部屋の空間のつくり方にも細かい気配りがなされていたことにも感心させられた。
ちょうど常設の特集展示では、若いときから渦の生成にこだわり、ドローイング・アニメーションを展開する石田尚志がとりあげられていたが、名和展との同時開催は比較できて興味深い。石田がアナログ寄りで、名和がデジタルな感性に近いことがよくわかる。理科系アートでありながら、センシュアルな名和作品は、建築系にもおすすめだ。

2011/06/26(日)(五十嵐太郎)

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