artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
味のり マメイケダ 絵の展覧会
会期:2016/04/13~2016/04/24
iTohen[大阪府]
日々の食事を日記のようにノートに描き続けているマメイケダ。洋食、和食、中華、弁当、パン、駄菓子など、庶民的なメニューを描いたその作品は、自分の好物を率直に描いているのが素晴らしい。本展では展覧会仕様の大作も展示されていたが、作品が放つ魅力はノートの小品と変わりなかった。日頃、コンセプトがどうの、文脈がどうのといった作品と数多く接しているが、創作の原点に忠実なのはむしろ彼女のほうだろう。作品を見てシンプルに共感し、その魅力を誰かに伝えたくなる。ちなみに画像の作品は《味のり》。オールオーバーの抽象絵画然とした画面とタイトルのギャップに大笑いした。
2016/04/14(木)(小吹隆文)
行千草「うつろうひび たそがれごはん」
会期:2016/04/12~2016/04/17
ギャラリー恵風[京都府]
具象的な風景にパスタが混入することで異界が出現する。行千草の絵画作品を簡単に説明すると、このような感じだ。本展でも大阪の高層ビルの壁面から素麺流しのようにパスタが垂れている作品が出展されたが、同時に新傾向の作品もあった。ティーカップの中で女性が湯浴みしており、その周囲に洋菓子やペイズリー柄が散りばめられたものである。同作は、ペイズリー柄について調べるうち、その発祥の地はインドで、英国のペイズリー市で量産されたこと、インドと英国といえば紅茶、紅茶といえばティータイム、ティータイムといえば茶菓子といった具合に想像をつなげて描いたものだ。パスタの作品よりもモチーフに多様性があり、多義的な解釈ができる。伸びしろも大きいと思うのだが、今後も継続的に制作されるのか不明だ。次回の個展を注視したい。
2016/04/12(火)(小吹隆文)
樫永創展
会期:2016/04/11~2016/04/16
O ギャラリー eyes[大阪府]
以前は群青などの暗色が支配するモノトーンの画面が特徴だった樫永。それは自身の内面の淵へ至ろうとする意志の表われだった。しかし、昨年の個展から色遣いに明暗が見られるようになり、マスキングテープを用いた空間分割も導入。本展の新作では色数が大幅に増加し、ストロークや飛沫が明瞭になったことで、画面が一気にエモーショナルになった。一方、マスキングテープによる空間分割はさらに複雑化し、感情を制御する役目を果たしている。いわば本能と理性が画面上でせめぎ合っている状態であり、この微妙な均衡から生じるスリルこそ、新作の核心といえるだろう。樫永創の画業は新たな段階に入った。
2016/04/11(月)(小吹隆文)
作元朋子「FORM FROM」
会期:2016/04/08~2016/04/30
TEZUKAYAMA GALLERY[大阪府]
画廊には3種類の陶オブジェがあった。まず、三角錐と円錐が合体して丸っこくなった感じの立体、次に円柱が途中で折れ曲がったかぎ括弧状の立体、もうひとつは極薄の三角柱で、書棚の升目にぴったり収まっていた。いずれもストライプ模様をもっており、第1の作品は部品をバラバラに並べた展示も行なわれている。その様子から分かるのは、本作が型に着色した泥漿(でいしょう)を流して部品を作り、合体後に磨きをかけて焼成したということだ。技術的に高い精度をもっており、デザインも洗練されていることに感心した。作者は生まれも育ちも岡山県で、筆者は本展で初めて存在を知った。今後も機会があればフォローしていきたい。
2016/04/09(土)(小吹隆文)
東城信之介|REC+交じり融けし箍
会期:2016/03/26~2016/04/23
COHJU contemporary art[京都府]
鋼板、銅板に錆びとグラインダーの削り跡でイメージを描き出す東城信之介の作品。薄い金属板とは思えない奥行と層構造は、グラインダーを当てる角度を微妙に変えることで生じる。観客が移動すると光の反射角が変化し、イメージがゆらゆらと動いて見えるのも興味深い。また、照明を落とすと表面が傷ついた金属板にすぎないが、光を得た瞬間に生命を得る(=空間が出現する)ギャップも作品の魅力といえるだろう。最近はインターネットの画像検索が便利になり、実物を見なくても良しとする人が増えているが、東城の作品はそうはいかない。じかに作品と対面すれば、筆者の説明が大げさではないと分かるはずだ。
2016/04/05(火)(小吹隆文)