artscapeレビュー

樫永創展

2016年05月15日号

会期:2016/04/11~2016/04/16

O ギャラリー eyes[大阪府]

以前は群青などの暗色が支配するモノトーンの画面が特徴だった樫永。それは自身の内面の淵へ至ろうとする意志の表われだった。しかし、昨年の個展から色遣いに明暗が見られるようになり、マスキングテープを用いた空間分割も導入。本展の新作では色数が大幅に増加し、ストロークや飛沫が明瞭になったことで、画面が一気にエモーショナルになった。一方、マスキングテープによる空間分割はさらに複雑化し、感情を制御する役目を果たしている。いわば本能と理性が画面上でせめぎ合っている状態であり、この微妙な均衡から生じるスリルこそ、新作の核心といえるだろう。樫永創の画業は新たな段階に入った。

2016/04/11(月)(小吹隆文)

2016年05月15日号の
artscapeレビュー