artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
大槻香奈実験室その2「かみ解体ドローイング」
会期:2015/02/12~2015/03/06
ondo[大阪府]
少女をモチーフにした、イラストあるいは漫画的画風の絵画で知られる大槻香奈。少女が意味するのは、自身の内面、現代の風俗、価値観といったものであろう。彼女は通常の個展とは別に、「大槻香奈実験室」と題した番外編活動を2014年から始めた。本展はその第2弾である。今回のテーマは「ドローイング」だ。過去のドローイングを大量に出品したほか、複数のドローイングを組み合わせたコラージュ作品も発表し、彼女の中で存在感を増しつつあるドローイングについて再考を試みている。また、会場の一角には制作スペースが設けられ、公開制作も随時行なわれているようだ。あいにく私が訪れた日は作家不在で、さらに深く創作の秘密を知ることはできなかった。
2015/02/18(水)(小吹隆文)
かのうたかお展
会期:2015/02/10~2015/02/22
ギャラリー中井[京都府]
かのうたかおの陶芸作品は、壺状の型にシャモット(耐火レンガを細かく砕いた粒)と長石を混ぜて詰め、焼成したものだ。壺としての実用性はなく、それどころかいくつもの亀裂や穴が開いている。砂礫のような質感も相まって朽ち果てた古代遺物のようだ。しかしそこには、「陶芸とは何か」という根本的な問いかけや、歴史ある窯元の家に生まれた自身の出自、大学卒業後に海外青年協力隊の一員としてニジェール共和国を訪れた際に知ったアフリカの土や砂への思いなどが反映されている。つまり、かのうの陶芸観を凝縮したオブジェなのだ。また、新作の一部には人面の造形や櫛目模様も見受けられるが、これは弥生式土器から着想したものだという。この日本陶芸史にコミットする姿勢は、従来の作品には見られなかったものだ。新たな要素を加えた彼の創作は、次のステップへと踏み出しつつある。
2015/02/10(火)(小吹隆文)
山城大督個展「HUMAN EMOTIONS/ヒューマン・エモーションズ」
会期:2015/02/06~2015/02/22
ARTZONE[京都府]
京都市内の複数の会場で行なわれた「映像芸術祭 MOVING 2015」のプログラムの一つ。《VIDER DECK/イデア・デッキ》と《HUMAN EMOTIONS/ヒューマン・エモーションズ》の2作品が出品されたが、特筆すべきは後者。本作は、会期前の会場に簡単なセットを組み、そこに1歳、5歳、7歳の子供たちを登場させ、複数台のカメラで撮影したものを撮影時とほぼ同じ状態の会場で再生するものだ。まだ社会を知らない子供たちが遊戯的な交流を続ける中で、種々の感情や関係性が生まれ、社会性の萌芽らしきものがうっすらと確認できる。子供たちの行動は本当に瑞々しく、またスリリングでもある。最初から最後まで目を離せない本作は、まさに傑作と呼ぶべきであろう。
2015/02/07(土)(小吹隆文)
浅野綾花「Uターンのまなざし」
会期:2015/02/03~2015/02/21
橘画廊[大阪府]
浅野綾花は、都市風景をモチーフにした版画や言葉を用いた作品で知られる若手作家だ。作品には多分に自分自身の経験や感情が反映されており、私小説的な作風と言ってよいだろう。そんな彼女が、本展で新たな方向性を見せてくれた。それは、人物(自分、友人、知人、芸能人)の顔を描いた版画と、商品パッケージや包装紙、レシートなどをコラージュした新作だ。コラージュにより具体的な物質と情報が導入され、彼女の表現はまた新たな段階に入ることになる。現実と空想、主観と客観が入り混じった詩的世界が、今後ますます豊かになることを期待している。
2015/02/04(水)(小吹隆文)
石川竜一 okinawan portraits
会期:2015/01/27~2015/02/21
昨年11月に赤々舎から2冊の写真集、『okinawan portraits 2010-2012』と『絶景のポリフォニー』を出版した石川竜一。本展では、『okinawan~』から80点近くが展示された。沖縄の島々をバイクで駆け巡り、出会った人々約3000人を撮影した中から選ばれた本作。そこに写っている面々があまりにも個性的であることに驚かされる。また、ヤンキーや右翼も写っており、「沖縄にもいるのか」と驚くと同時に、自分の中にステレオタイプな沖縄像があることにも気付かされた。このシリーズは以前にキヤノンの「写真新世紀」で見たことがあるが、久々の再開で感慨もひとしおだ。なお、『絶景の~』の作品は、同時期に大阪ニコンサロンでの個展で発表された。
2015/01/31(土)(小吹隆文)