artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
京都・島原で少年の冒険心
会期:2015/01/20~2015/02/06
BAMI gallery/COMBINE[京都府]
京都の繁華街である四条河原町の近所(寺町通高辻上ル)で活動していたBAMI gallery/COMBINEが、かつて花街だった島原に移転。築70年以上という古い木造の長屋建築をリフォームした空間で、新たな活動を始めた。本展は活動再開を記念した顔見世的グループ展であり、取り扱い作家8名の作品をずらりと並べている。展示に特段の特徴はないが、本展の場合、見どころは画廊空間そのものである。工事は専門業者でなければ不可能な部分以外は画廊主と作家たちで行なっており、DIY的な手作り感が濃厚。その素朴さがかえって好ましい。2階には作家用の制作スペースも設けられており、画廊と作家がこれまで以上に深い関係性を持って互いの仕事を遂行していこうとする決意が感じられた。画廊と作家たちの今後の活躍が大いに楽しみだ。
2015/01/27(火)(小吹隆文)
梅原育子展 SEIBUTSU
会期:2015/01/20~2015/02/01
ギャラリーマロニエ[京都府]
梅原育子の作品といえば、有機的なフォルムと、野焼き特有の焼けムラや煤け具合が特徴の陶オブジェだ。ところが本展では、《SEIBUTSU》と題した器型の新シリーズを発表。器としての実用性は低そうだが、形態は美しく、作品がずらりと並ぶさまはそれこそ静物画のようだ。今後彼女が実用器の制作に乗り出すか否かは不明だが、筆者自身はオブジェと器を並行して制作することに賛成である。芸術と工芸のいい所取りができるのは陶芸の特権なのだから。
2015/01/24(土)(小吹隆文)
高橋治希展 ─呼吸するように─
会期:2015/01/15~2015/01/30
galerie 16[京都府]
ツル科の植物を模した造形物が、画廊空間いっぱいに展開されていた。高さは人間の膝上から腰ぐらいであろうか。ツルは海面のように波打ち、琳派の水流表現にも通じるところがある。花の部分には絵が描かれており、それを見た時、ようやくこの作品が磁器だと気付いた。筆者は2010年の「瀬戸内国際芸術祭」で彼の作品を見た経験があるが、その時は日本間での展示だったため、ホワイトキューブで見る今回とは印象がまるで違う。それにしてもこの細長いツルの部分はどのように作っているのか。高橋は金沢在住で、作品は九谷焼ということだが、本当に大した技術である。
2015/01/24(土)(小吹隆文)
プレビュー:映像芸術祭 MOVING 2015
会期:2015/02/06~2015/02/22
京都芸術センター、京都シネマ、METRO、ARTZONE、HAPS、アトリエ劇研、Gallery PARC、Antenna Media、児玉画廊[京都府]
2012年の第1回以来、3年ぶりに開催される映像芸術祭。京都市内のアートセンター、映画館、クラブ、ギャラリー、劇場など9会場を舞台に、映像展、上映会、映像メインの舞台公演、映像と音によるライブ、映像に関するトークなどが行なわれる。出品作家・出演者は、林勇気、前谷康太郎、水野勝規、宮永亮、八木良太(画像は彼の作品)、山城大督、あごうさとしなど。関西でこの手の映像芸術祭は貴重であり、第1回と比べても規模が拡大している。その成否が今後に与える影響は大きいだろう。
2015/01/20(火)(小吹隆文)
日本の写真史を飾った写真家の「私の1枚」
会期:2015/01/10~2015/02/11
伊丹市立美術館[兵庫県]
富士フイルム株式会社が創業80周年を記念して立ち上げた「フジフイルム・フォトコレクション」。これは、幕末から20世紀(=デジタル化以前)に至る日本を代表する写真家101名の「この1点」という代表作を集めた銀塩写真の作品群だ。幕末のベアト、上野彦馬、下岡蓮杖に始まり、木村伊兵衛、土門拳、細江英公、森山大道、篠山紀信、荒木経惟……と巨匠の作品がズラリと並ぶ様は圧巻。文字通りのオールスター展覧会だった。巨匠の数ある代表作から1点だけを選ぶのは難しく、なかには「なぜこの人の1点がこの作品なのだろう」と思うこともあったが、それを言っても仕方ない。本展を見て、改めて日本の写真文化と写真産業の豊かさを実感した。
写真:植田正治《パパとママとコドモたち》(1949)
2015/01/18(日)(小吹隆文)