artscapeレビュー
小吹隆文のレビュー/プレビュー
とびだす/うつわ 桝本佳子の世界
会期:2014/10/25~2014/11/30
たつの市立龍野歴史文化資料館[兵庫県]
陶芸における器と装飾の関係をテーマにした独創的な作品で知られる桝本佳子。彼女が、生まれ故郷の兵庫県たつの市で大規模な個展を開催した。桝本の作品には幾つかのタイプがある。ひとつは、《ガードレール/壺》など、装飾が器から飛び出す、外部から突き抜けるなどした作品、もうひとつは《壺/城》など、モチーフの形態が壺のアウトラインに沿って削られ、器の内と外が逆転してしまったかのような作品、そして《瓢箪壺》など、装飾モチーフを立体化した後、強引に器の形に圧縮する「圧縮紋」と名付けられたシリーズだ。本展ではそれらの作品20点が展示されただけでなく、会場の所蔵品から選ばれた、絵画、地図、民芸品などを一緒に並べ、双方を比較、あるいは見立てを行なう趣向も盛り込まれた。彼女の作品は一見ゲテモノじみているが、陶芸史への意識的な問いかけという点で好感が持てる。なお本展は、同時期に同地域で開催された「龍野アートプロジェクト2014」と連携した企画展である。
2014/11/01(土)(小吹隆文)
JAPAN ARCHITECTS 1945-2010/3.11以後の建築
会期:2014/11/01~2015/03/15/2014/11/01~2015/05/10
金沢21世紀美術館[石川県]
2004年の開館から10周年を迎えた金沢21世紀美術館。同館が10周年記念企画に選んだのは、1945年から2010年に至る日本の建築をテーマにした「JAPAN ARCHITECTS 1945-2010」と、東日本大震災以後の建築の動向を伝える「3.11以後の建築」だった。ポンピドゥー・センター副館長のフレデリック・ミゲルーがキュレーターを務めた「JAPAN ARCHITECYS~」は、時間軸に沿って区分した6セクションから成り、それぞれにカラー・コード(色彩による性格付け)が付与されている。展示品は図面と模型が中心で、当時制作されたオリジナルを可能な限り揃えた点に価値がある。100名以上の建築家に取材し、300点以上の作品が揃う、重厚かつ見応えのある展覧会だった。本展を機に建築資料の価値が向上し、アーカイブ化の機運が高まることを期待する。一方、「3.11~」は建築史家の五十嵐太郎とコミュニティ・デザイナーの山崎亮をゲスト・キュレーターに招いた企画で、東日本大震災以後の建築界で起こった新しい潮流(環境やエネルギーへの配慮、クライアントや地域住民との関係性、地域資源の見直し、建築家の役割の変化など)を7つのキーワードと25組の建築家からひも解く企画だった。インスタレーション、映像、テキストを多用しているのが特徴で、フィールドワークの調査報告といった趣である。そこから窺えるのは、巨匠建築家が先導するトップダウンの時代から、建築家と地域住民が協同してコミュニティをつくり上げるボトムアップの時代へと変化する建築の姿であった。ただし、本展が提唱する新しい建築像は、現実の建築業界ではマイナーな存在であり、あくまでも先端的・予見的な企画である点に留意が必要である。
2014/10/31(金)(小吹隆文)
三浦徹コレクション 生誕100周年記念 あるがままに生きた画家 タカハシノブオ 叫ぶ原色・ものがたる黒
会期:2014/09/23~2014/11/24
BBプラザ美術館[兵庫県]
本展を見たのは偶然である。ある仕事のために神戸を訪れ、予定より早く着いたものだから、暇つぶしのつもりで美術館に入ったのだ。タカハシノブオ(1914~1994)のことなどまったく知らなかった。彼は波乱の人生を歩んだ画家だった。2度の従軍、妻の死、生活苦ゆえの幼い娘との離別……。その後、高度成長期の神戸の片隅で、肉体労働をしながら一心不乱に描き続けたのだ。タカハシの作品は具象を基本としているが、なかには抽象化してしまったものもある。画面を覆う黒と、暗闇のなかで輝くような彩色が特徴だ。絵の特徴を一言でいうと「ハングリー」に尽きる。満たされぬ思い、ままならぬ生活、底辺から見た社会、愛し愛されることへの飢え、それら諸々の感情が画面に塗り込まれ、ギラギラとした迫力で見る者に迫るのだ。また、彼は詩作も行なっており、118点の絵画と共に10点の詩が出品されていた。こちらも絵画と同様の魅力を持つことを付記しておく。無名のまま没した画家が、20年の時を経て適正な評価を受ける時がやって来た。その第一歩となる機会に、偶然とはいえ立ち会えたことを幸運に思う。
2014/10/26(日)(小吹隆文)
プレビュー:咲くやこの花コレクション 大西康明 展 空洞の彫刻
会期:2014/11/08~2014/11/29
アートコートギャラリー[大阪府]
ポリシートや接着剤など量塊性の希薄な素材を駆使して、空洞や余白を意識させるネガの空間をつくり出す大西康明。近年は海外でも旺盛な活動を行なっている彼が、久々に大阪で個展を開催する。本展では、光と重力を用いて内側をつくることから実体のない外側の創出を試みる新作を発表。また、初期作品も合わせて展示され、大西の造形世界を概観することができる。なお本展は、大西が平成25年度の「咲くやこの花賞」(大阪の文化振興に貢献し、将来担うべき存在に対して大阪市が授与している賞)を受賞したことを記念して開催されるものである。
2014/10/20(月)(小吹隆文)
プレビュー:Open Storage 2014─見せる収蔵庫─
会期:2014/11/08~2014/11/24の金土日祝日
MASK(MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA)[大阪府]
おおさか創造千島財団は、大阪市の北加賀屋にある鋼材工場・倉庫跡を生かし、現代美術作家の大型作品を保存・展示するプロジェクト「MASK(MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA)」を進めている。それらの収蔵作品を初めて一般公開するのが、この催しだ。海外では同様の事例がすでに行なわれているが、国内での開催は珍しい。今回の参加アーティストは、宇治野宗輝、金氏徹平、久保田弘成、やなぎみわ、ヤノベケンジの5名。巨大な工場跡空間で繰り広げられる大型彫刻作品の共演に、今から胸が躍る。
2014/10/20(月)(小吹隆文)