artscapeレビュー
かのうたかお展
2015年03月01日号
会期:2015/02/10~2015/02/22
ギャラリー中井[京都府]
かのうたかおの陶芸作品は、壺状の型にシャモット(耐火レンガを細かく砕いた粒)と長石を混ぜて詰め、焼成したものだ。壺としての実用性はなく、それどころかいくつもの亀裂や穴が開いている。砂礫のような質感も相まって朽ち果てた古代遺物のようだ。しかしそこには、「陶芸とは何か」という根本的な問いかけや、歴史ある窯元の家に生まれた自身の出自、大学卒業後に海外青年協力隊の一員としてニジェール共和国を訪れた際に知ったアフリカの土や砂への思いなどが反映されている。つまり、かのうの陶芸観を凝縮したオブジェなのだ。また、新作の一部には人面の造形や櫛目模様も見受けられるが、これは弥生式土器から着想したものだという。この日本陶芸史にコミットする姿勢は、従来の作品には見られなかったものだ。新たな要素を加えた彼の創作は、次のステップへと踏み出しつつある。
2015/02/10(火)(小吹隆文)