artscapeレビュー

artscape編集部のレビュー/プレビュー

カタログ&ブックス | 2020年10月1日号[テーマ:都市]

テーマに沿って、アートやデザインにまつわる書籍の購買冊数ランキングをartscape編集部が紹介します。今回のテーマは、ワタリウム美術館(東京都)で開催中の「生きている東京展」や国立新美術館(東京都)で開催中の「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」にちなみ「都市」。このキーワード関連する、書籍の購買冊数ランキングトップ10をお楽しみください。
ハイブリッド型総合書店honto調べ。書籍の詳細情報はhontoサイトより転載。
※本ランキングで紹介した書籍は在庫切れの場合がございますのでご了承ください。

「都市」関連書籍 購買冊数トップ10

1位:STUDIO VOICE vol.415(2019September)We all have Art

発行:INFASパブリケーションズ
発売日:2019年9月21日
定価:537円(税抜)
サイズ:30cm、248ページ

ジャンルレスなカルチャー誌。インドネシアのアートコレクティブ、中国SF、東南アジアのフィルムメーカーたち、ベトナム大都市のビジュアルカルチャーなどを取り上げる。


2位:大正昭和レトロチラシ 商業デザインにみる大大阪

著者:橋爪節也
発行:青幻舎
発売日:2020年6月16日
定価:2,300円(税抜)
サイズ:19cm、255ページ

大正14年(1925)、東京市を抜いて日本第1位、世界第6位のマンモス都市に膨張した大阪市。「大大阪」と称された華やかな時代の秀選チラシ約360点を、「買う」「食べる」といった6つのテーマに分けて収録する。


3位:山内マリコの美術館は一人で行く派展 ART COLUMN EXHIBITION 2013-2019(Bros.books)

著者:山内マリコ
発行:東京ニュース通信社
発売日:2020年3月3日
定価:1,600円(税抜)
サイズ:19cm、267ページ

アート界とは無縁の作家が行った、7年分の美術展の記録! 新時代、新感覚の、やさしいアート入門書。 ありふれた地方都市に生きる女の子を描いた小説『ここは退屈迎えに来て』で、鮮烈なデビューを飾った山内マリコ。瑞々しくリアルな筆致で心の機微を捉える彼女の小説は、同世代を中心に圧倒的な共感を呼ぶ一方、エッセイでは抜群のユーモアセンスを発揮。コラムやレビューの依頼が絶えない作家です。大阪芸術大学を卒業し、美術館めぐりが趣味だった彼女は、2013年に雑誌『TV Bros.』で、美術展をテーマにした連載をスタートします。主に一人で、自腹で美術館の企画展に行き、作品の紹介はもちろん、芸術家の背景にも思いを巡らせながら、感じたことをそのまま書く。彼女のユーモラスな文体は、ときに小難しいと思われがちなアートの魅力を、身近な存在として伝えてくれます。



4位:東京ミュージアム散歩 そうそう、行きたいな、と思ってた! 11の街の51の美術館と博物館へ。(LMAGA MOOK)

編集・発行:京阪神エルマガジン社
発売日:2020年7月3日
定価:950円(税抜)
サイズ:26cm、95ページ

東京は日本でもっとも豊富なアート体験ができる恵まれた都市。その時々で、魅力的な展覧会も尽きません。そんな中でも、新設やリニューアルなど、ニュースのある美術館・博物館をピックアップして11エリアへ誘います。さらに、近隣の知られざるミュージアムをめぐり、散歩の途中においしい名店やカフェ、おみやげにも立ち寄って、どっぷり文化・芸術に浸る一日をご提案します。いまこそ行きたい、何度でも行きたい保存版です。



5位:都市は文化でよみがえる(集英社新書)

著者:大林剛郎
発行:集英社
発売日:2019年10月17日
定価:800円(税抜)
サイズ:18cm、204ページ

文化(アート)は都市再生に多大な影響を与えるものである。しかし、アート単独、特に現代アートによる地域復興には限界がある。アトラクティブな美術館の建設やアートイベントは一時的な集客であり、その地に住む人々にとって真に魅力的な地域となるかは別問題だ。都市の再生や復興は、もともとそこにある文化や歴史、人々の営みを無視して成すことはできない。本書では、金沢、岡山・瀬戸内エリア、前橋、大阪、ヨーロッパ、香港など、国内外のケースを参考にしながら、アートと都市の関係性を考える。現代美術家の会田誠、フランスの元文化大臣ジャック・ラングとの対談も収録。



6位:公の時代

著者:卯城竜太、松田修
発行:朝日出版社
発売日:2019年9月24日
定価:1,800円(税抜)
サイズ:19cm、322ページ

「アーティスト」が消失した次は、「個」が消える番だ。 復興、オリンピック、芸術祭、都市再開発、表現の自由──“ブラックボックス化”した大正の前衛アートを手がかりに、開かれた社会(パブリック)と「個」を探る画期的な公共/芸術論! 津田大介、青木淳、福住廉の三氏も対話に参加。
ウェブ版「美術手帖」での好評連載を全面改訂し、新たな論として更新。「あいちトリエンナーレ2019」の“公開”検閲・展示中止を受けた対談も急遽追加。
大きなアートフェアや芸術祭に率先して「配置」されるアーティスト、民営化されて「マジョリティ」しか入れなくなった公園や広場、「滅私奉公」して作品を社会から閉ざしていく市民のタイムライン……「みんな」「一般」の名のもとに、トップダウン/ボトムアップ双方から個人が侵食されていくとき、新しい公共圏と自由をどうつくっていくか? 「個と公」の問題を、アーティストとアートの存在意義をテコにして実践的に考える。



7位:憧れのインスタグラマー20名に学ぶ美しい写真術

著者:fuka09 ほか
発行:インプレス
発売日:2020年5月22日
定価:1,800円(税抜)
サイズ:21cm、207ページ

ポートレート、風景、旅、動物、都市夜景…。多彩なジャンルで活躍している人気フォトグラファーの人気の秘密に迫る。インスタグラムの活用方法や、美しい写真の撮り方&仕上げ方、Q&A、使用カメラやレンズなども収録する。



8位:印象派の歴史 下(角川ソフィア文庫)

著者:ジョン・リウォルド
翻訳:三浦篤、坂上桂子
発行:KADOKAWA
発売日:2019年8月23日
定価:1,360円(税抜)
サイズ:15cm、431+94ページ

1874年春、ついに第一回「印象派展」が幕を開けた。自然や都市への新たな眼差しを共有する若き画家たちが自らつくり上げるグループ展──それは事件だった。観衆の戸惑い、嘲笑、辛辣な批評の一方で、のちの近代美術史に刻まれる数々の名作が産声をあげていく。カフェでの激論、支援者の拡大、仲間の死、そしてゴッホ、ゴーガン、スーラら次世代への継承。全八回の印象派展を丹念に辿る通史の決定版。詳細な文献目録を収録。



9位:デジタルカメラによる野鳥の撮影テクニック

著者:中野耕志
発行:誠文堂新光社
発売日:2015年8月25日
定価:1,600円(税抜)
サイズ:21cm、191ページ

単なるカメラの扱い方を紹介するのではなく、野鳥を撮影するための基礎知識や生態を紹介し、臨機応変に野鳥撮影ができるように解説します。また、都市公園・農耕地・森林・山岳・高山・海岸・干潟などの環境別の機材や装備、撮影法の他、実例を挙げて個々の野鳥の撮影テクニックを紹介します。



10位:杉本博司 瑠璃の浄土 京都市京セラ美術館開館記念展

著者・撮影:杉本博司
編集:京都市京セラ美術館
発行:平凡社
発売日:2020年4月3日
定価:3,181円(税抜)
サイズ:29cm、229ページ

2020年3〜6月に京都市京セラ美術館で開催の展覧会の図録。写真家・杉本博司が「瑠璃の浄土」のタイトルのもと、仮想の寺院の荘厳を構想した作品等を収録する。三木あき子らの論考も掲載。折込みページあり。





artscape編集部のランキング解説

オリンピックの開催がコロナ禍の影響で延期になった2020年夏の東京。この数年間あちこちで進んでいた都市開発もクライマックスを迎えるなか、「生きている東京展」や「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」をはじめとして、東京という都市の姿をさまざまな角度から見つめ直す展覧会が現在数多く開催されています。
今回のテーマ「都市」のランキングでは、東京のみならず大阪やアジア諸国など、都市とそこで紡がれる文化のアイデンティティにクローズアップした書籍・雑誌が並びました。1位の『STUDIO VOICE vol.415』は、vol.413での音楽、vol.414でのファッションに続いてアジアのアートの現場を取材したアジア特集三部作の完結編。世界的ヒットを記録する中国発SF『三体』の著者インタビューを筆頭に、文学を含めたアジアの芸術事情の先端に迫ります。各都市の空気感やざわつきを伝えるハイクオリティな写真や誌面構成にも注目したいところ。『大正昭和レトロチラシ 商業デザインにみる大大阪』(2位)は、当時東京を抜いて活気のあったという商いの街・大阪のポスターや商業印刷物を集めたビジュアルブック。闊達な描き文字やコントラストの効いた配色のグラフィックを眺めているうちに、気持ちもどこか上向きになってくる一冊です。
都市(≒公共空間)と芸術の接続や、そこから生じるジレンマを題材とした書籍も目立ちました。金沢や瀬戸内、ヨーロッパや香港など国内外のアートプロジェクトやまちづくりの事例を見ながら、そこに住む人にとっても真に魅力的な都市のかたちを芸術や建築の力とともに模索する新書『都市は文化でよみがえる』(5位)は、設立以来都市にまつわる研究助成を行なう大林財団の理事長であり、建設会社大林組の経営も務める大林剛郎の視点によるもの。一方で、アーティストの炎上騒動や展示の自主規制といったトピックを端緒に、「みんなのため(=公)」が「個」よりも優先される近年の日本社会の空気について語る対談本『公の時代』(6位)では、公共空間というものの曖昧さが浮き彫りにされています。
みなさんの暮らす都市はこの数年でどのように変わったでしょうか。逆に変わらないものは何でしょうか。都市空間とアートのこれからを考える手立てとして、今回ランクインした本を一助にしていただければ幸いです。


ハイブリッド型総合書店honto(hontoサイトの本の通販ストア・電子書籍ストアと、丸善、ジュンク堂書店、文教堂など)でジャンル「芸術・アート」キーワード「都市」の書籍の全性別・全年齢における購買冊数のランキングを抽出。〈集計期間:2019年9月16日~2020年9月15日〉

2020/10/01(木)(artscape編集部)

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カタログ&ブックス | 2020年9月15日号[近刊編]

展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をartscape編集部が紹介します。
※hontoサイトで販売中の書籍は、紹介文末尾の[hontoウェブサイト]からhontoへリンクされます





活動の奇跡 アーレント政治理論と哲学カフェ

著者:三浦隆宏
発行:法政大学出版局
発行日:2020年6月30日
定価:3,400円(税抜)
サイズ:四六判、380ページ

アーレントが見出した「活動」の奇蹟と、哲学カフェ実践の軌跡。人生のさまざまな困難の当事者を含め、誰もが平等に声を発し、互いに耳を傾け、その人固有の存在として現われることのできる新しい政治的公共性の場所づくりが、いま求められている。哲学とその外を往還し、村上春樹と悪のモチーフ、建築や臨床の知の具体例から、「私たち」の感覚を取り戻し、思考なき全体主義を克服する道を探る好著。

A NEW RIVER

著者:岩根愛
ブックデザイン:町口覚
発行:bookshop M
発行日:2020年7月28日
定価:2,500円(税抜)
サイズ:257mm×182mm、32ページ

デザイン/装画:


第44回木村伊兵衛写真賞を受賞した岩根愛の新刊。三春、北上、遠野、一関、八戸で撮影された桜のほか、各地の伝統芸能の写真で構成。

美術解剖学とは何か

著者:加藤公太
発行:株式会社トランスビュー
発行日:2020年7月30日
定価:2,500円(税抜)
サイズ:A5判、280ページ

「美術解剖学」という学問がある。古くはダ・ヴィンチが解剖のスケッチをしていたように、芸術家は人間を表現するために、人体の内部構造から多くのことを学んできた。しかし、この美術と医学のあいだにある学問について、現代的な知見に基づいてしっかりと解説した本はほとんどない。本書は、美術解剖学について、その内容から歴史までを概観した、人体を「見る目」を養う学問についての、これまでにない入門書だ。

笹久保伸写真集 Town C Difference and Repetition

著者:笹久保伸
デザイン/装画:鷲尾友公
発行:現代企画室
発行日:2020年8月1日
定価:2,800円(税抜)
サイズ:B5判、48ページ

秩父のアーティスト笹久保伸が、自身の生まれ育った秩父の町を撮影した写真集。(中略)3作目となるこの写真集では、彼の故郷である秩父のリアルな姿が映し出される。笹久保伸の目を通して見る郷里の風景には、外側からは見えない世界の細部が浮かび上がるだろう。

瀬戸内国際芸術祭2019

監修:北川フラム、瀬戸内国際芸術祭実行委員会
寄稿:北川フラム、福武總一郎、西尾洋一、高木智子
発行:青幻舎
発行日:2020年8月7日
定価:3,000円(税抜)
サイズ:B5判、296ページ

2010年に「海の復権」をテーマに掲げスタートした、瀬戸内国際芸術祭。4回目を迎えた2019年の芸術祭では、瀬戸内海の12の島々と2つの港を舞台に、春・夏・秋の3会期に分て計107日間開催された。世界32の国と地域から参加した230組のアーティストによる、瀬戸内海でしか生み出すことのできないアートやイベント、体験、食プロジェクトまでを完全収録した記録集。

押井守の映画50年50本

著者:押井守
発行:立東舎
発行日:2020年8月12日
定価:2,200円(税抜)
サイズ:A5判、320ページ

キューブリック、タランティーノ、デル・トロ…。押井守が、1968年から2017年まで、各年を代表する映画を1本ずつ選び、これまでの50年を振り返りつつ、未来の映画の可能性についても考察する。

政治の展覧会:世界大戦と前衛芸術 (政治の展覧会)

企画・制作:引込線/放射線パブリケーションズ
主催:引込線2019実行委員会
編集長:松井勝正
副編集長:中島水緒
デザイン:橋本聡
発行:EOS ART BOOKS
発行日:2020年8月27日
定価:1,500円(税抜)
サイズ:A5判、160ページ

2つの世界大戦が生じた時期の政治と芸術について、マリネッティ、リシツキーなど4人の芸術家・批評家の大戦期の活動をケーススタディとして取り上げて考察する。ホッチキス止めされた1000ソヴィエトルーブル紙幣付き。





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2020/09/14(月)(artscape編集部)

カタログ&ブックス | 2020年9月1日号[テーマ:皮膚]

テーマに沿って、アートやデザインにまつわる書籍の購買冊数ランキングをartscape編集部が紹介します。今回のテーマは、足利市立美術館(栃木県)で2020年11月3日(火・祝)まで開催中の展覧会「瞬く皮膚、死から発光する生」にちなみ「皮膚」。このキーワード関連する、書籍の購買冊数ランキングトップ10をお楽しみください。
ハイブリッド型総合書店honto調べ。書籍の詳細情報はhontoサイトより転載。
※本ランキングで紹介した書籍は在庫切れの場合がございますのでご了承ください。

「皮膚」関連書籍 購買冊数トップ10

1位:青空

歌詞:真島昌利
絵:Botchy-Botchy
発行:現代書館
発売日:2019年12月16日
定価:1,300円(税抜)
サイズ:22cm

生まれた所や皮膚や目の色で、いったいこの僕の何がわかるというのだろう──。いつの時代に口ずさんでも同じ強い力を持っている、ザ・ブルーハーツの名曲「青空」を絵本化。吉本ばななのメッセージも収録。


2位:マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustuion−燃焼 完全版(ハヤカワ文庫 JA)

著者:冲方丁
発行:早川書房
発売日:2010年10月
定価:700円(税抜)
サイズ:16cm、324ページ

少女は戦うことを選択した──人工皮膚をまとい、高度な電子干渉能力を得て再生したバロットにとって、ボイルドが放った5人の襲撃者も敵ではなかった。ウフコックが変身した銃を手に、驚異的な空間認識力と正確無比な射撃で、次々に相手を仕留めていくバロット。しかしその表情には強大な力への陶酔があった。やがて濫用されたウフコックが彼女の手から乖離した刹那、ボイルドの圧倒的な銃撃が眼前に迫る。緊迫の第2巻。


3位:ANIMAL MODELING 動物造形解剖学

著者:片桐裕司
発行:玄光社
発売日:2017年5月26日
定価:2,700円(税抜)
サイズ:26cm、170ページ

皮膚にあらわれる骨格の凹凸、動きによって形を変える肢体の筋、光と影による筋肉のかたち──。造形家の視点からとらえた、動物造形解剖学の決定版。ハリウッド造形界のトップの立体作品を彫刻レクチャーとともに収録する。



4位:島々百景

文と写真:宮沢和史
発行:ラティーナ
発売日:2019年7月3日
定価:2,500円(税抜)
サイズ:18×18cm、167ページ

その音楽を産んだ土壌に、人々に会いたくて旅に出るのだ。なぜその音楽が生まれたのか。それを皮膚で知り、感じたいからなのだ──。歌手の宮沢和史が、音楽に誘われ旅した島々の記憶を綴る。『月刊ラティーナ』連載を書籍化。



5位:ミメーシスを超えて 美術史の無意識を問う

著者:岡田温司
発行:勁草書房
発売日:2000年5月
定価:3,700円(税抜)
サイズ:20cm、275+13ページ

絵の見方、美術の歴史を「父の機能」の一党支配から解放する戦略とは? 無意識のイデオロギーを相対化し、主体、トラウマ、メディウムと皮膚、見る・触れる、メタファー・メトニミー等の観点から試行する。



5位:考える皮膚 触覚文化論 増補新版

著者:港千尋
発行:青土社
発売日:2010年3月
定価:2,400円(税抜)
サイズ:20cm、308ページ

棘の芸術、タトゥー・ブーム、皮膚の色の政治学、盲目論、世界皮膚の夢……。エスニック芸術からテクノロジーに至るまでの領域を渉猟してさぐる、時代のうごきを先鋭的に捉えた触覚文化論。



5位:どうぶつのことば 根源的暴力をこえて

著者:鴻池朋子
発行:羽鳥書店
発売日:2016年9月5日
定価:3,400円(税抜)
サイズ:22cm、365ページ

人間の思索のみに閉じるアートに、皮膚の森から啼き声があがる。芸術の始まりに立ち戻り、人間がものをつくることを問い直す。人間と動物の境界に出現するアートを求めて、様々な専門家との対話の旅をする。いままでのものとは全く違う想像力と出会った鴻池朋子が、語り、書く。



8位:かなでるからだ 混声合唱とピアノのための(合唱 混声)

作曲:森山至貴
詩:みなづきみのり
発行:音楽之友社
発売日:2016年5月14日
定価:1,800円(税抜)
サイズ:30cm、62ページ

「皮膚、肌」「膝」「骨」「肩」の4曲からなる組曲。「人体」をテーマにした詩は肌や骨の手触り、その存在感をコミカルに描きながら、歌い手はそれを体全体で表現する。激しくビートを刻んでアクロバチックに、ときには高音を絶唱し、狂おしく優しく人生の悲喜を、体温の熱さを奏でる。



9位:クラシック野獣主義

編著:鈴木淳史
発行:青弓社
発売日:2013年6月21日
定価:1,600円(税抜)
サイズ:19cm、173ページ

クラシックは一度はまれば出口がない怪しくも魅惑に満ちた世界だ! 迷宮のなかで頼りになるのは自分の感性だけ。聴くことの快楽を突き詰めた達人たちのほとばしる感性に身をゆだねて皮膚感覚を研ぎ澄ませ、クラシックに耽溺しつくすための咆哮的論考集。



9位:銘機礼讃2 語りだすディテール

著者:田中長徳
発行:日本カメラ社
発売日:1996年11月
定価:2,117円(税抜)
サイズ:20cm、276+16ページ

塗り直しライカの皮膚感覚、チープシックのリコーカメラ、指のパワーを保存するカメラ、気になるカメラがひしめきあう、カメラエッセイ。「銘機礼讃」から4年、待望の続編。



9位:CGテクスチャプロ技55 現場で使える実践テクニック+フリー素材

著者:岩崎塁、櫻井克彦
発行:ワークスコーポレーション
発売日:2010年12月
定価:3,800円(税抜)
サイズ:26cm、263ページ

大理石、土、木、ヘアライン、人の皮膚、紙……。3DCG作成において頻繁に使用するテクスチャを厳選し、その作成方法を分かりやすく解説。写真撮影のコツや動画のマッピングなども掲載。





artscape編集部のランキング解説

「『皮膚』は、人の存在そのものを包んで成り立たせる役割を担っています。私たちは『皮膚』を通して、他者や光景の中に宿る無数の命と、生涯を通じ呼応し続けています」。これは足利市立美術館で開催中の、写真を中心とした企画展「瞬く皮膚、死から発光する生」のステートメントからの引用です。今回のランキングでも、書誌情報の本の説明のなかに「皮膚で知る/感じる」「皮膚感覚」といった表現が用いられていたことでランクインしている本が少なくありません。皮膚は感覚器官のひとつとして日常のなかで敏感に機能し、人々に強いイメージを想起させ続けているのでしょう。
その文脈で特に注目したいのが、5位にランクインした『考える皮膚 触覚文化論 増補新版』。写真家/映像人類学者である著者が古今東西の彫刻、絵画、写真、広告、あるいは民俗学的なアプローチから、皮膚を「脳のひろがり」として捉え直し、触覚についての思索をアップデートできる豊かな一冊です。続けて読むのにおすすめしたいのは、牛革などを素材に用い、「表皮」のイメージを観る者に喚起させる《あたらしい皮膚》《皮緞帳》などの作品でも知られるアーティスト・鴻池朋子による対談集『どうぶつのことば 根源的暴力をこえて』(同列5位)。鴻池が、考古学やおとぎ話の研究者などさまざまな分野の専門家と対峙し「芸術の始まり」をめぐって語る言葉には、先述の『考える皮膚』との親和性が感じられるところもあり、彼女の作品だけでなく、芸術作品全般の見方が拡張されるはず。
一方、ザ・ブルーハーツの楽曲世界を絵本化した『青空』(1位)や、金属繊維による人工皮膚を移植された少女が主人公として戦うSF作品『マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustuion−燃焼 完全版』(2位)など、「皮膚」というキーワードを起点に、技術書からフィクションまでバラエティ豊富なランキングになりました。暑さも次第に落ち着いてくるこれからの季節、環境の変化にも身体感覚を研ぎ澄ませつつ、読書を楽しんでみてください。


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2020/09/01(火)(artscape編集部)

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カタログ&ブックス | 2020年8月1日号[近刊編]

展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をartscape編集部が紹介します。
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開校100年 きたれ、バウハウス —造形教育の基礎—

監修:深川雅文、杣田佳穂
執筆:長田謙一、杣田佳穂、宮島久雄、利光功、貞包博幸、柏木 博、冨田英夫、木村理恵子、深川雅文、長谷川新、下村朝香、梅宮弘光、常見美紀子、川谷承子、高橋麻帆、橘美貴、星野立子、牧野裕二
編集:深川雅文、杣田佳穂、下村朝香、成相肇、市川飛砂(株式会社アートインプレッション)
デザイン:NOSIGNER
翻訳:原田明和
発行:株式会社アートインプレッション
発行日:2019年
定価:2,128円(税込)
サイズ:220x220mm、264ページ

本図録は、バウハウス創設100年の節目を迎え、展覧会の内容を解説とともに収録するとともに、バウハウスに関するさまざまなテーマについて今日の研究成果を反映した論文の集成に力点を置いています。併せて、バウハウスの基本文献として三つの重要原典の翻訳を収録しています。 

ART in LIFE,LIFE and BEAUTY

編集:池田芙美、佐々木康之、宮田悠衣(以上、サントリー美術館)
英訳:エリザベス・ティンズリー
デザイン:高岡健太郎(日本写真印刷コミュニケーション株式会社)
発行:サントリー美術館
発行日:2020年7月22日
定価:2,500円(税込)
サイズ:B5変形、268ページ

2020年7月22日~9月13日までサントリー美術館で開催されている「リニューアル・オープン記念展 Ⅰ ART in LIFE, LIFE and BEAUTY」展のカタログ。「生活の中の美(Art in Life)」基本理念に展示・収集活動を行なってきた同館のコレクションと、古美術に造詣の深い現代作家の山口晃、彦十蒔絵・若宮隆志、山本太郎、野口哲哉の作品をクロスさせた特別展示。

没入と演劇性 ディドロの時代の絵画と観者

著者:マイケル・フリード
訳者:伊藤亜紗
発行:水声社
発行日:2020年7月28日
定価:5,000円(税抜)
サイズ:A5判、374ページ

観者の存在を前提とするミニマリズム作品を批判した概念として名高い「演劇性」は、18世紀のフランス絵画の成立条件に関わる根本的な問題として登場した。画家たちの様々な試みを見るとともに、ディドロに代表される当時の美術批評家の言説を読み解きながら、いかにして観者という存在のあり方が問題視されるようになったのか、その理論的枠組を大胆に提示する。

げいさい

著者:会田誠
発行:文藝春秋
発行日:2020年8月6日
定価:1,800円(税抜)
サイズ:四六判、320ページ

まさに鬼才。
過激に、独創的に、第一線を走り続けてきた現代美術家、会田誠。
その活躍は、いまホットな美術界だけにとどまりません。
「とにかく信じられないくらい文章がうまい。ほれぼれしちゃう」と、吉本ばななに言わしめたエッセイ。高橋源一郎、斎藤美奈子らが激賞した処女小説『青春と変態』。そんな会田誠が、最初の構想より30年以上、執筆に4年の歳月を費やした長編小説です。

未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀

著者:岡田利規
発行:白水社
発行日:2020年8月3日
定価:2,400円(税抜)
サイズ:四六判、140ページ

東京オリンピック2020招致のため、2012年に新国立競技場の設計者としてコンペで選ばれた天才建築家ザハ・ハディド。その圧倒的な造形のビジョンを白紙撤回され、その後ほどなく没した彼女をシテとして描く「挫波」。夢のエネルギー計画のため、1985年の着工以来一兆円を超す巨額の資金が投じられたものの、一度も正式稼動することなく、廃炉の道をたどる高速増殖炉もんじゅについて謡う「敦賀」。
表題作二曲のほか、夢幻能と間狂言に今日的なキャラクター(六本木駅に現れる金融トレーダーの幽霊、都庁前駅に現れるフェミニズムの幽霊、『ハムレット』のせりふを覚える舞台女優)を登場させ、資本主義に飲み込まれている現代日本の姿を描いた「NŌ THEATER」とともに、演劇論(「幽霊はアレルギー症状を引き起こさない」、「能は世界を刷新する」)を併録する。

テレビジョン テクノロジーと文化の形成

著者:レイモンド・ウィリアム
訳者:木村茂雄、山田雄三
発行:ミネルヴァ書房
発行日:2020年8月4日
定価:3,500円(税抜)
サイズ:四六判、290ページ

テレビというメディアは、それまでに普及したメディア(新聞、討論、広告など)にない、まったく新しい人的コミュニケーションをもたらした。本書は、実例を通じた精緻な分析により、テレビが与えた変化とはなにかをを問うものである。カルチュラル・スタディーズにおけるテレビ論の古典、待望の翻訳。(原書 Raymond Williams,Television:Technology and Cultural Form,2nd.ed.,Routledge,1990[Routledge Classics, 2003])

京都発・庭の歴史

著者:今江秀史
発行:世界思想社
発行日:2020年7月31日
定価:2,400円(税抜)
サイズ:四六判、232ページ

文化財保護に長年携わってきた哲学研究者が、平安から現代までの千年をガイド。
見た目や美しさだけではなく、知られざる使われ方に注目し、現場ならではの視点から解説する。
庭は単なる鑑賞物ではない。
千年以上ものあいだ、庭ではいったい何が行われてきたのか?

建築のことばを探す 多木浩二の建築写真

写真:多木浩二
文章:多木浩二、今福龍太
デザイン:高室湧人
発行:建築の建築
発行日:2020年7月14日
定価:6,000円(税抜)
サイズ:303x207mm、256ページ

本書編者のアーティスト・飯沼珠実が、本書刊行までにみつけた多木の建築写真は12,000コマを数え、収録写真の半数以上が、撮影から50年前後のときを経て、本書において初めて発表されます。
写真は被写体の竣工年順に並べられ、建築作品の基本情報に加え、本書デザイナー・高室湧人が描きおこした図面に、多木の撮影地点をプロットした資料が添えられます。さらに2本のテキスト、多木が篠山紀信写真集『家 Meaning of the House』(潮出版, 1975)に寄せた28編のエッセイのひとつ「家のことば」と、文化人類学者・今福龍太の書き下ろし「家々は海深く消え去りぬ 多木浩二の『反-建築写真』」を収録します。





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2020/08/01(土)(artscape編集部)

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カタログ&ブックス | 2020年7月15日号[近刊編]

展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をartscape編集部が紹介します。
※hontoサイトで販売中の書籍は、紹介文末尾の[hontoウェブサイト]からhontoへリンクされます





写真とファッション 90年代以降の関係性を探る

執筆・編集:林央子、伊藤貴弘(東京都写真美術館)
編集補助:山田裕理(東京都写真美術館)
デザイン:須山悠里
翻訳:ルース・マクレリー
発行:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館
発行日:2020年3月3日
定価:2,000円(税抜)
サイズ:263×184mm、116ページ

2020年7月19日まで東京都写真美術館で開催されている「写真とファッション 90年代以降の関係性を探る」展のカタログ。監修は編集者の林央子。アンダース・エドストローム、髙橋恭司、エレン・フライス×前田征紀、PUGMENT、ホンマタカシの作品を通して、1990年代以降の写真とファッションの関係性を探る。図版、作家略歴、作品リスト、林および担当学芸員のテキストを収録。 

アンビルトの終わり ザハ・ハディドと新国立競技場

著者:飯島洋一
発行:青土社
発行日:2020年5月12日
定価:6,200円(税抜)
サイズ:四六判、990ページ

2015年、「アンビルトの女王」として知られるザハ・ハディドが設計した新国立競技場の原案が白紙撤回され、激震が走った。本来、市民一人ひとりの生活に意匠を凝らすべき建築家たちが、なぜ「アンビルト」を描くのか。資本と消費の論理が先行し、物語や理念が失われた時代に、私たちは建築の未来を語ることができるのか。混迷を極めた新国立競技場問題の背景を、すみずみまで検証する。「建てられざる建築」とその終わりをめぐる、圧倒的論考。

ミュージアムの憂鬱 揺れる展示とコレクション

編著:川口幸也
執筆:宮内洋平、鷲田めるろ、宮下規久朗、辻泰岳、佐藤真実子、池上司、横山佐紀、野呂田純一、サラ・デュルト、関 直子、豊田由貴夫、須永和博、稲賀繁美
装幀:宗利淳一
発行:水声社
発行日:2020年6月25日
定価:6,000円(税抜)
サイズ:A5判、413ページ

近代が生んだ展示と収集の装置=〈ミュージアム〉。歴史をかたる権力を託されたこの〈装置〉は、混迷する世界の中で、いかなる役割を果たしていくのか。
さまざまな時代と場所における多角的検証を通じて、これからのミュージアムの(不)可能性を問う、最新の研究成果。

芸術とその対象

著者:リチャード・ウォルハイム
翻訳:松尾大
発行:慶應義塾大学出版会
発行日:2020年6月15日
定価:4,200円(税抜)
サイズ:四六判、320ページ

再現や表現、意図の意味など、美学の基本問題について現在の定説を基礎づけた1968年刊行のロングセラー。
芸術作品を哲学的に考察し、文化や社会においてそれらがどのような役割を果たしているか明らかにする。本書の深い洞察は、美学概論として今もなお多大な影響を与えつづけている。

映画を見る歴史の天使 あるいはベンヤミンのメディアと神学

著者:山口裕之
発行:岩波書店
発行日:2020年6月18日
定価:5,000円(税抜)
サイズ:四六判、372ページ

ベンヤミンが「映画」に見出した複製技術の展開と知覚の変容。それは神学的思考といかにかかわるのだろうか。本書は、これまで個別に論じられていたベンヤミンの「メディア」と「神学」を架橋し、彼が構想していた「救済」の真の姿に迫る。没後80年、ベンヤミン研究は新たな次元へ。

文化は人を窒息させる デュビュッフェ式〈反文化宣言〉

著者:ジャン・デュビュッフェ
翻訳:杉村昌昭
発行:人文書院
発行日:2020年5月30日
定価:2,200円(税抜)
サイズ:四六判、140ページ

「アール・ブリュット」の名付け親による文化的芸術への徹底批判。制度的な文化概念を根底から覆し、真に自由な創造へと向かう痛快なテクスト。フランス現代思想の知られざる原点ともいえる比類なき著作、初の邦訳。
「本書は一九六〇年代ラディカリズムの極致を体現する『文化革命宣言』である。支配的文化の強度が極限にまで高まり、社会の鋳型にはめられたまやかしの個人主義が横行するいまこそ、その趨勢を逆転し、『普通の人間』としての個人のあたりまえの世界を回復するために、このデュビュッフェの『たったひとりの反乱』の意味をわれわれひとりひとりが噛み締めなければならないと思う。」(訳者あとがきより)

トーキョーアーツアンドスペース アニュアル 2019

デザイン:塚原敬史、岩間良平(trimdesign)
編集:杉本勝彦
インタビュー撮影:中村力也
インタビュー:内田伸一
インタビュー通訳:田村かのこ(Art Translators Collective)
発行:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館トーキョーアーツアンドスペース事業課
発行日:2020年6月12日
定価:非売品(ウェブサイトでPDFデータを公開)
サイズ:A5判、167ページ

トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)の2019年度の活動をまとめた事業報告書。開催した展覧会や公募状況の報告、レジデンスに参加したアーティストのインタビューなどを収録。

奈良市アートプロジェクト 古都祝奈良 2017-2020

企画・編集:奈良市アートプロジェクト実行委員会
編集:松永大地
デザイン:赤井佑輔(paragram)
発行:奈良市アートプロジェクト実行委員会
発行日:2020年3月
定価:非売品
サイズ:A5判、91ページ

奈良市アートプロジェクト「古都祝奈良(ことほぐなら)」は、1300年にわたる歴史や文化が今に息づく奈良を舞台に、美術や演劇などの現代の表現を通じて、奈良に集う国内外の人びとと奈良で生活する人びとが共に体験し作り上げるプロジェクト。2017年から2020年までの開催実績を掲載した報告書。





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2020/07/15(水)(artscape編集部)

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