artscapeレビュー

artscape編集部のレビュー/プレビュー

カタログ&ブックス | 2021年6月15日号[近刊編]

展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
※hontoサイトで販売中の書籍は、紹介文末尾の[hontoウェブサイト]からhontoへリンクされます





問題=物質となる身体──「セックス」の言説的境界について

著者:ジュディス・バトラー
監訳:佐藤嘉幸
翻訳:竹村和子、越智博美
発行:以文社
発行日:2021年5月19日
サイズ:A5判、448ページ

『ジェンダー・トラブル』によって明らかにされた権力と言説によるジェンダー形成の過程。ジェンダー/クィアに関する理論書である同書は、フェミニズムやジェンダー、クィア・スタディーズにおいて画期をなすと同時に、多くの物議を醸した。「ジェンダー」と同じく、「セックス」は言説によって構築されるものなのか。そのとき、身体の物質性はいかに理解されるのか。本書は、『ジェンダー・トラブル』へ寄せられた批判に応答した、その続編であり、バトラーの「もうひとつの主著」である。……
近年、改めて注目が高まるフェミニズムやLGBTQ、ブラック・ライヴズ・マターに代表される「人種」の問題にも接続しうる現代の理論書。

未来派 百年後を羨望した芸術家たち

著者:多木浩二
発行:コトニ社
発行日:2021年6月11日
サイズ:A5判変型、352ページ

なぜ百年後を羨望するか? 私たちは、なぜ未来に憧れ、そして失敗するのか。
20世紀、そして21世紀における文化・政治・テクノロジー・広告といったさまざまな人間活動の萌芽であった芸術・社会運動「未来派」。その「未来派」の全容に、宣言・運動・詩法・建築・ネットワーク・ダイナミズム・音楽・ファシズム・起源という9つの切り口で迫り、現代における「未来観」の再考をはかる。哲学者・美術批評家の多木浩二がイタリアで渉猟した膨大な書物や資料をもとに書いた渾身の遺作。

「ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island ─あなたの眼はわたしの島─」展図録

編集:牧口千夏、後藤桜子
執筆:カルヴィン・トムキンズ、マッシミリアーノ・ジオーニ、牧口千夏、後藤桜子
翻訳(和文英訳):クリストファー・スティヴンズ
翻訳(英文和訳):奥村雄樹、ベンジャー桂
デザイン:[カタログ Vol.1:ヴィジュアルブック]岡﨑真理子+後藤尚美 /[カタログ Vol.2:テキストブック]岡﨑真理子+泉美菜子
発行:京都国立近代美術館
発行日:2021年4月5日
サイズ:[カタログ Vol.1:ヴィジュアルブック]B5判変形、176ページ/[カタログ Vol.2:テキストブック]B5判変形、84ページ(挿込冊子 8ページ)

2021年4月から京都国立近代美術館にて開催されている「ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island ─あなたの眼はわたしの島─」展の図録。2冊組。

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ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island ─あなたの眼はわたしの島─|村田真:artscapeレビュー(2021年06月01日号)

ジャパノラマ──1970年以降の日本の現代アート

編著:長谷川祐子
執筆:エマ・ラヴィーニュ、小林康夫、毛利嘉孝、北野圭介、三木学、加治屋健司、宮沢章夫、清水穣、星野太、エマニュエル・ドゥ・モンガゾン
発行:水声社
発行日:2021年6月25日
サイズ:22cm、199ページ

1970年以降の日本現代アートの〈パノラマ〉 2017年にポンピドゥー・センター・メッスで開催された、「JAPANORAMA: NEW VISION ON ART SINCE 1970」展。〈群島〉(アーキペラゴ)というコンセプトのもと、6つのテーマを設定し、日本の現代視覚文化をパノラマとして描き出したこの展覧会は大きな反響を巻き起こした。 そのフランス語版カタログに多数の作品・展示写真を追加し、展覧会記録資料を大幅に増補した、待望の日本語版。

佐藤雅晴 尾行─存在の不在/不在の存在

著者:佐藤雅晴
発行:美術出版社
発行日:2021年5月19日
サイズ:B5判変型、216ページ

佐藤雅晴は、日常風景をビデオカメラで撮影した後、パソコン上のペンツールを用いて慎重にトレースする「ロトスコープ」技法でアニメーション作品や平面作品を制作。現前に映る事物の実在感とともに、不確かさや儚さなどを感じさせる独特の世界観が国内外で高い評価を受けるなか、2019年に45歳の若さで亡くなった。
本書では、代表作《Calling》(2009–2010/2014)、《東京尾⾏》(2015–2016)、《福島尾⾏》(2018)などの映像アニメーション作品、アクリル画などの展覧会出品作を紹介するほか、出品作以外の作品も掲載。現実と非現実が交錯したような作品世界を、様々な展示風景写真とともに表現した一冊。そのほか、佐藤の作品を丁寧に紐解く論文やエッセイも収録し、活動の全貌が初めて作品集としてまとめられる。

ファッション イン ジャパン1945-2020ー流行と社会

著者:国立新美術館、島根県立石見美術館
発行:青幻舎
発行日:2021年4月10日
サイズ:A4判変型、368ページ

もんぺからサステイナブル、さらにその先へ、戦後の日本ファッション史をたどる
戦中戦後のもんぺ、国際的に華々しく活躍する日本人デザイナーの台頭、ゴスロリ……。日本が生み出してきた装いの文化は、その独自の展開で世界を驚かせてきた。豊かな表現を生み出すきっかけとなった明治期以降の社会状況や流行を発端に、戦後から現在に至るまで日本のファッションを包括的に紹介。衣服、写真、雑誌、映像など豊富な資料を通して、 流行の発信者と衣服をまとう私たち、その両者をつなぐメディア、それぞれの視点から各時代のファッションを紐解く。

アイノとアルヴァ 二人のアアルト

編集:アルヴァ・アアルト財団、ギャラリー エー クワッド
執筆:ニーナ・ストリッツラー=レヴァイン、ウッラ・キンヌネン、皆川明、安東美穂子、パトリック・フレミング、白川裕信、岡部三知代
発行:国書刊行会
発行日:2021年3月23日
サイズ:A4判変型、324ページ

互いの才能を認めあい、影響しあい、補完しあいながら作品をつくり続けたアイノ・マルシオ(1894-1949)とアルヴァ・アアルト(1898-1976)。アイノがパートナーになったことで、アルヴァに「暮らしを大切にする」という視点が生まれ、モダニズム建築の潮流のなかで、アアルト建築はヒューマニズムと自然主義が共存する独自の立ち位置を築いた。結婚してからアイノが54歳の若さで他界するまで、二人が協働した25年間というかけがえのない創造の時間を、これまで注目されることの少なかったアイノの仕事に着目しながらたどり、アアルト建築とデザインの本質と魅力を見つめ直す。長年遺族のもとで保管されてきた初公開資料を多数収録し、アアルト・ファミリーへのインタビュー等も収録する充実の一書。

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アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド─建築・デザインの神話|杉江あこ:artscapeレビュー(2021年04月15日号)
カタログ&ブックス | 2021年4月1日号[テーマ:夫妻]|artscape編集部:artscapeレビュー(2021年04月01日号)

うきよの画家

著者:谷原菜摘子
執筆:中井康之、森村泰昌
発行:MEM
発行日:2021年5月26日
サイズ:28×22cm、64ページ

2021年5月26日から上野の森美術館ギャラリーとMEMで開催された谷原菜摘子「うきよの画家」、「紙の上のお城」展にあわせて出版された作品集。



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アートを育てるまち、北加賀屋──見に行く場所から、つくる場所へ|小倉千明:artscapeフォーカス(2021年04月15日号)

コンヴィヴィアル・テクノロジー 人間とテクノロジーが共に生きる社会へ

著者:緒方壽人
発行:BNN
発行日:2021年5月21日
サイズ:A5判、300ページ

人間にとってテクノロジーとはどのようなものなのか。これからのテクノロジーはどうあるべきなのか。テクノロジー自体が自律性を持ち始めたAI時代に、人間と人間、人間と自然、そして人間とテクノロジーが共に生きるための「コンヴィヴィアル・テクノロジー」とは何なのか ── デザイン・イノベーション・ファームTakramで数々の先駆的なプロジェクトを率いてきた気鋭のデザインエンジニア・緒方壽人氏が、先人たちのさまざまな言説を辿り、思考を巡らせながら紐解きます。

日常的実践のポイエティーク

著者:ミシェル・ド・セルトー
翻訳:山田登世子
発行:筑摩書房
発行日:2021年3月10日
サイズ:文庫判、560ページ

読むこと、歩行、言い回し、職場での隠れ作業…。それらは押しつけられた秩序を相手取って狡智をめぐらし、従いながらも「なんとかやっていく」無名の者の技芸である。好機を捉え、ブリコラージュする、弱者の戦術なのだ―。科学的・合理的な近代の知の領域から追放され、見落とされた日常的実践とはどんなものか。フーコー、ブルデューをはじめ人文社会諸科学を横断しつつ、狂人、潜在意識、迷信といった「他なるもの」として一瞬姿を現すその痕跡を、科学的に解釈するのとは別のやり方で示そうとする。近代以降の知のあり方を見直す、それ自体実践的なテクスト。





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2021/06/14(月)(artscape編集部)

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カタログ&ブックス | 2021年6月1日号[テーマ:観光]

テーマに沿って、アートやデザインにまつわる書籍の購買冊数ランキングをartscape編集部が紹介します。千葉市美術館で開催中の「大・タイガー立石展 POP-ARTの魔術師」において、立石が活動初期に画家の中村宏とともに結成した「観光芸術研究所」にちなんで、今回のテーマは「観光」。「芸術・アート」ジャンルのなかでこのキーワードに関連する、書籍の購買冊数ランキングトップ10をお楽しみください。
ハイブリッド型総合書店honto調べ。書籍の詳細情報はhontoサイトより転載。
※本ランキングで紹介した書籍は在庫切れの場合がございますのでご了承ください。

「観光」関連書籍 購買冊数トップ10

1位:世界遺産 理想と現実のはざまで(岩波新書 新赤版)

著者:中村俊介
発行:岩波書店
発売日:2019年8月23日
サイズ:18cm、246ページ

「国際社会で人類の至宝を守り、後世に手渡す」の理想を掲げ、観光資源としても注目される世界遺産。だが、登録物件が増え続けるなか、いくつもの遺産が危機に瀕し、また各国の政治的介入が常態化するなど課題や矛盾が噴出し始めている。数々の世界遺産の現場を訪ね歩いたジャーナリストがその「光と影」に目を向けながら、文化遺産保護の未来について考える。


2位:flower mandalas 心を整える、花々のマンダラぬりえ

著者:シンシア・エマリー
発行:日本文芸社
発売日:2016年2月9日
サイズ:22×22cm、95ページ

発売3か月で7万部! イギリス、フランスで大好評
本書はイギリス発、刊行後3ヶ月で7万部の売上をマークした人気のマンダラぬりえブック。さらにはフランスでも好評で、パリで大人気の一冊です。イギリスのamazonでも「すばらしい価値がある」「愛すべき本」と5つ星評価が。何冊か買って、自分だけの作品をコレクションしている人もいるとか。あの現代アートの殿堂、パリを訪れる観光客なら必ず訪れる、ポンピドゥーセンターでも並べられています。(後略)


3位:d design travel 28 岡山

発行:D&DEPARTMENT PROJECT
発売日:2020年10月16日
サイズ:23cm、192ページ

デザイン目線で観光を見直したガイドブック。岡山の見どころ、レストラン、カフェ、ショップ、人などを厳選して紹介するほか、編集部が本音で薦めるおみやげなども掲載。データ:2020年6月現在。



4位:d design travel 26 香川

発行:D&DEPARTMENT PROJECT
発売日:2019年9月30日
サイズ:23cm、192ページ

デザイン目線で観光を見直したガイドブック。香川の見どころ、レストラン、カフェ、ショップ、人などを厳選して紹介。香川県のフライヤー「ことでんストーリープロジェクト 入賞作品集」付き。データ:2019年5月現在。



5位:d design travel 27 愛媛

発行:D&DEPARTMENT PROJECT
発売日:2020年4月3日
サイズ:23cm、192ページ

デザイン目線で観光を見直したガイドブック。愛媛の見どころ、レストラン、カフェ、ショップ、人などを厳選して紹介。愛媛のフライヤー「週末西条トリップ」付き。データ:2019年11月現在。



6位:仏像図解新書(小学館101新書)

著者:石井亜矢子
画:岩崎隼
発行:小学館
発売日:2010年4月1日
サイズ:18cm、222ページ

図解で一目でわかる、仏像のかたちと役割。
「千手観音の持っている物は何か?」「四天王とはどんな4人組のことなのか?」「阿修羅が戦う相手は誰か?」。 遷都1300年を迎える奈良、春の観光シーズンをむかえる京都をはじめ、各地の仏像巡りで感じる素朴な疑問を解決してくれる、新書タイプの必携版・仏像事典です。仏像の由来、種類、役割といった基本知識から、印相や持物など専門知識にいたるまで、イラストをふんだんに使い見開きごとにわかりやすく解説。イラストでひと目でわかる、読んでさらに理解が深まる、画期的な入門書として初心者にもおすすめです。種類別「代表的な仏像10選」コラム、巻末「地区別・寺院リスト」付き。拝観マナーや持ち物など、知っておきたい実用情報も満載の貴重な一冊。



7位:吉田初三郎鳥瞰図集 大正の広重が描いた全国名所図会 よみがえる100年前の日本

著者:吉田初三郎
発行:昭文社
発売日:2021年4月20日
サイズ:26×30cm、111ページ

大正の広重、吉田初三郎が描いた超絶技巧の全国名所パノラマ絵図集!
大正の広重と呼ばれる絵師・吉田初三郎は、鉄道会社や新聞社、自治体、地域の観光協会、旅館やホテルなど宿泊施設の依頼を受け、観光案内用の鳥瞰図を数多く制作。日本のあらゆる都市を描き、数千点の作品を残しました。綿密な取材に基づく精緻な描写、清涼さが漲る鮮やかな色使い、テーマ全体を過不足なく入れ込む大胆な構図など、いま見ても斬新で目を奪われます。初三郎の傑作の数々を一冊に凝縮した本書で、その独特の筆致を存分に堪能できます。近年ますます評価の高まる吉田初三郎の決定版画集!



8位:英文サインのデザイン 利用者に伝わりやすい英文表示とは?(TYPOGRAPHY BOOKS)

著者:小林章、田代眞理
発行:ビー・エヌ・エヌ新社
発売日:2019年10月23日
サイズ:21cm、159ページ

日本の空港、駅、行政機関などの公共施設や観光関連施設などで見かける不自然な英文表示や分かりづらいサインデザイン。英語情報だけが頼りの人の目線で今の日本を歩き回ると、とても困ることに気づきます。(中略)訪日外国人が3000万人を超え、オリンピック・パラリンピック開催を控えた現在、きちんと伝わる英文案内・表示(英文サイン)の整備がされなければ、将来のインバウンド需要は先細りになることは明らかです。
本書は、欧文書体デザインと英文翻訳の専門家がそれぞれの視点から日本の英文表示の問題点を提起し、コンパクトでも伝わりやすい英文とその見せ方について解説します。(中略)誰にでも分かりやすい表示は、ユニバーサルデザイン、インクルーシブデザイン、ソーシャルデザインの観点からもこれからますます重要になってきます。公共機関、行政、観光などの担当者やそうした仕事に関わるデザイナー必読の一冊です。



9位:山本まりこの「女子旅」カメラレッスンin韓国 ふんわりかわいく思い出を撮る!(デジイチ女子)

著者:山本まりこ
発行:主婦の友社
発売日:2011年10月
サイズ:21cm、111ページ

デジイチ女子に大人気のフォトグラファーが、旅の撮影テクニックを伝授。魅力あふれる韓国の旅をエッセイ風に紹介しながら、簡単に素敵な写真を撮るための技を解説。デジタル一眼カメラの基本やブログにアップする方法も掲載。



10位:仏像さんを師とせよ 仏像修理の現場から

著者:八坂寿史
発行:淡交社
発売日:2020年11月7日
サイズ:19cm、231ページ

〈仏像修理のプロ集団のトップが語る、仏像修理の裏側〉
〈ある仏像から聞こえた“大地震の予言”〉
近年、観光資源でもある文化財の保存と修理について徐々に関心が高まっている傾向にありますが、その具体的な修理内容や修理技術者の声などを知る機会はそう多くはありません。岡倉天心によって創設された仏像修理を専門に手掛ける美術院国宝修理所の歴史は120年以上と長く、国内外のあらゆる仏像の修理を行ってきました。本書では、現在修理工房のトップを務め、東大寺南大門仁王像や薬師寺弥勒三尊像など数多くのお像を修理してきた著者が、公には語られることのなかった仏像をめぐる様々なドラマを、ユーモアの溢れる言葉で綴ります。





artscape編集部のランキング解説

「『観光』という言葉は、中国の四書五経の一つ『易経』の一文である『観国之光』が語源とされているが、それは『国の文化、政治、風俗をよく観察すること』、『国の風光・文物を外部の人々に示すこと』というような意味・語感を有していたといわれていること等も考えあわせると、いわゆる『観光』の定義については、単なる余暇活動の一環としてのみ捉えられるものではなく、より広く捉えるべきである」(国土交通省「21世紀初頭の観光振興を考える基本的視点」のページより)。普段何気なく使われている「観光」という言葉ですが、元をたどると「遊覧旅行」的な意味に限定されない、広い視野が含まれているようです。
今回のランキングでまず目につくのは、3・4・5位と並ぶ「d design travel」シリーズ。D&DEPARTMENT PROJECTが、「ロングライフデザインの視点で、長く続くものだけを取り上げること」「取り上げた場所や人とは、発刊後も継続的に交流を持つこと」など、一貫した編集方針のもと47都道府県別に制作している観光ガイドブックです。ふとしたところに表われる、その土地らしさや独特な文化を豆知識として伝える「◯◯(県名)のふつう」のページや、一般的な観光ガイドには載らないような小さなお店の空気感をとらえた取材テキスト・写真など、その県に訪れる予定がなくても、誌面を眺めているうちに興味と愛着がつい湧いてしまいます。
打って変わって、「観光」と聞いて思い浮かぶ象徴的なもののひとつは、ガイドブックのなかの観光マップや鳥瞰図のイメージかもしれません。『吉田初三郎鳥瞰図集』(7位)は、大正から昭和にかけて活動した鳥瞰図絵師・吉田初三郎(1884-1955)による鳥瞰図を集めたビジュアルブック。観音開きを用いた製本によって全国各地の鳥瞰図を大きなサイズで眺められ、庶民の間で観光がブームとして盛り上がっていた時代のムードを味わえる一方で、関東大震災の1年後に描かれた、火災の被害状況を報道的に伝える鳥瞰図なども掲載されており、「大正の広重」と呼ばれた吉田が背負うものの多さに思いを馳せる一冊でもあります。
英語情報を頼りに行動する外国人観光客の目線で日本の駅や空港のサインデザインを見つめ直し、そこを出発点に公共におけるデザイン全般について再考せざるをえなくなる『英文サインのデザイン』(8位)もタイムリーな一冊。ランキング内で『仏像図解新書』(6位)、『仏像さんを師とせよ 仏像修理の現場から』(10位)と、複数の書籍において、仏像鑑賞と観光が自然と強く結びついているところも、日本ならではの「観光」観を感じさせてくれる面白いポイントでした。
すでに1年以上続くコロナ禍。気軽にお出かけができる状況になるのはまだ少し先になりそうですが、多種多様な「観光」の姿が本のなかには眠っています。


ハイブリッド型総合書店honto(hontoサイトの本の通販ストア・電子書籍ストアと、丸善、ジュンク堂書店、文教堂など)でジャンル「芸術・アート」キーワード「観光」の書籍の全性別・全年齢における購買冊数のランキングを抽出。〈集計期間:2020年5月23日~2021年5月24日〉

2021/06/01(火)(artscape編集部)

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カタログ&ブックス | 2021年5月15日号[近刊編]

展覧会カタログ、アートやデザインにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
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ボイス+パレルモ

編集:豊田市美術館、埼玉県立近代美術館、国立国際美術館
デザイン:刈谷悠三+角田奈央(neucitora)
発行:マイブックサービス
発行日:2021年3月
サイズ:200×297mm、368ページ

「ボイス+パレルモ」展(豊田市美術館、埼玉県立近代美術館、国立国際美術館 2021-22年)の公式カタログ。
1960年代のデュッセルドルフ芸術アカデミーで教師と教え子の関係にあったボイスとパレルモ。芸術概念を拡張し、積極的に社会へ働きかけたボイスと、抽象的で静謐な作品を作り続けたパレルモの個性は一見対照的でありながら、芸術を生の営みへと取り戻そうと試みた点では共通していた。──1960-70年代の両者の代表的な作品と本展企画者やドイツの研究者による書き下ろしのボイス論、パレルモ論、各論を軸に、アクションあるいは制作中の様子を捉えた多数のドキュメント写真や、ボイスがパレルモについて直接語ったテキストの全文翻訳など、貴重なアーカイブ資料を織り込んで重層的に構成した一冊。ボイスの「作品」と造形理論にあらためて光を当てるとともに、パレルモの活動を日本で初めて包括的に検証する。

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マーク・マンダースの不在

著者:マーク・マンダース
デザイン:須山悠里
撮影:今井智己
テキスト:松井みどり、ダグラス・フォーグル、鎮西芳美
翻訳:木下哲夫他
発行:HeHe
発行日:2021年5月25日
サイズ:255×180mm、216ページ

彫刻や言葉、オブジェを用いたインスタレーションによって国際的に評価を集める美術家、マーク・マンダース。国内美術館ではじめてとなる東京都現代美術館での個展開催にあわせ、待望の日本初作品集発売!
個展のカタログを兼ねた本書は、本邦初公開となるヴェネツィア・ビエンナーレに出品された作品や、重要な個展では必ず出品されてきた代表作を含む1000㎡に及ぶインスタレーション・ビューを今井智己が撮影。次章では、展覧会未出品20点を含む、計26点の作品について、マンダース本人によるテキストと図版で解説。その他作家のテキスト「マーク・マンダースの不在」「ドローイングのこと」や、スタジオ写真も収録した、作家マンダースを読み解く、貴重なモノグラフです。

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宇佐美圭司 よみがえる画家

編著:加治屋健司
発行:東京大学出版会
発行日:2021年4月10日
サイズ:B5判変形、176ページ

2021年4月から開催される東京大学教養学部駒場博物館「宇佐美圭司 よみがえる画家」展のカタログ。東京大学中央食堂に掛けられていた《きずな》が不用意な廃棄処分で失われたことの反省とともに、傑出した画家として活躍するだけでなく旺盛な評論活動でも知られた宇佐美の仕事を広い視野から捉え直す。出品作品に加えて、代表的な作品の図版、彼自身の文章や詳細な文献目録なども収録し、今後の現代美術研究にも有益な一書。

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「宇佐美圭司 よみがえる画家」展:アートフラッシュニュース(2021年03月26日)

《黄金の林檎》の樹の下で アートが変えるこれからの教育

著者:田窪恭治、高階秀爾、聖心女子大学
編著:水島尚喜、永田佳之
発行:三元社
発行日:2021年4月5日
サイズ:21×21cm、85ページ

「人間として在る」ための学びと、アートはいかにかかわるのか──。アートと出会った瞬間に「あっ、すごい! 」と直感し、他者や世界と融和する子どもたちの「共生的感性」や、「生命」のつながりに美を見る「自然との共生」の思想から、そのすがたを探る。「共生」「持続可能性」「多様性」の象徴として東京・広尾の聖心女子大学に誕生した田窪恭治のモザイク壁画《黄金の林檎》をめぐってくり広げられた、現代社会におけるアート、そして教育論。2017年の完成記念シンポジウム、待望の書籍化。

惑星都市理論

編者:平田周、仙波希望
発行:以文社
発行日:2021年4月21日
サイズ:上製カバー装、456ページ

コロナウイルス感染症の世界的な流行で、人々の移動が大幅に制限されるなかにおいても、まるで何も起きていないかのように駆動し続ける「世界経済」。それはすでに「惑星都市」が存在していることの証でもある。本書は、「惑星都市理論」(=プラネタリー・アーバニゼーション研究)という近年世界的に注目されている分析枠組みを用いて、「インフラ」「ロジスティクス」「リスケーリング」といった「惑星都市」を成り立たせる諸要素を考察しながら、「ポストコロニアル都市理論」「関係論的転回」「都市への権利」「自然の生産」など、欧米の都市理論を賑わせている対抗的ロジックの可能性と限界を見定め、その先を模索しようと試みる。「惑星都市」を私たちのものにするために。

虚像培養芸術論 アートとテレビジョンの想像力

著者:松井茂
発行:フィルムアート社
発行日:2021年3月24日
サイズ:四六判、上製、312ページ

1960年代、テレビジョンの想像力=「虚像」がアートを起動した。 磯崎新は都市デザインを虚業と称し、横尾忠則は虚像となり、高松次郎は影を演じた。今野勉はテレビの日常性を主張し、東野芳明は「テレビ環境論」を書いた。 マスメディアの想像力を分母に、現代を逆照射する戦後日本芸術論。

ディズニーと動物─王国の魔法をとく

著者:清水知子
発行:筑摩書房
発行日:2021年2月15日
サイズ:四六判、336ページ

ウォルト・ディズニーが創造したエンタテインメントは、米国大衆文化の代名詞であり、世界中を席巻している。姫と動物たちが織りなす夢と魔法の世界はいまなお拡大を続けるいっぽう、巨大資本を投入した反自然的な世界、徹底的に飼いならされた無菌化された世界でもある。ディズニーの物語は、現代の政治、社会、文化、自然に何をもたらしたか。その映像は私たちにどのような影響を及ぼしてきたか。その世界の舞台裏を探る。

言葉と衣服

著者:蘆田裕史
発行:アダチプレス
発行日: 2021年2月22日
サイズ:四六判変型、182ページ

私たちは生まれてからずっと、衣服とともに生活している。それなのに、衣服を語る言葉が貧しいのはなぜだろう。あいまいな用語が流通するファッションの世界に向き合い、本書は「言葉の定義=批評のためのインフラ整備」を試みる。ファッションをめぐる新たな思考が、この本からはじまる。

ここにあるしあわせ

著者:近藤亜樹
発行:T&M Projects + ShugoArts
発行日:2021年3月
サイズ:220×280mm、128ページ

2019年冬から2020年春にかけて、近藤亜樹が故郷・札幌にて描いた50点の作品群「ここにあるしあわせ」。

疾駆ZINE "YOUTH"

執筆者:ナタリー・ホーバーグ、石川嵩紘、加藤磨珠枝、上村洋一、菊竹寛、小林エリカ、鈴木俊晴、谷口正造、椿玲子、奈良美智、萩原俊矢、濱田智子、ミヤギフトシ、滝口悠生、蔵屋美香
グラフィック・デザイン:田中義久
発行:YKG publishing / Yutaka Kikutake Gallery Books
発行日:2021年4月10日
サイズ:B5判、40ページ

「Youth(仮)」展のオリジナルZINE 奈良美智さん初の短編小説や出展作家たちの物語、エッセイに加えて、様々な著者たちのYouthにまつわるエピソードを纏めました。





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2021/05/14(金)(artscape編集部)

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アヴァンギャルドのオリジナリティ モダニズムの神話

著者:ロザリンド・E・クラウス
翻訳:谷川渥・小西信之
発行:月曜社
発行日:2021年3月3日
サイズ:四六判上製、480ページ

20世紀美術批評の最重要論集。モダニズム芸術の中核概念である「特異性」「オリジナル」「唯一性」「原作者」「自発性」などを神話として分析し、それらによって覆い隠されている「反復」「コピー」「差異」「パスティッシュ」「展示空間」といった現実を顕わにする論争の書。美術をめぐる言説に、時代を超えて刺激を与え続けている現代の古典、改訳にてついに再刊。(原著1985年刊。『オリジナリティと反復』リブロポート、1994年刊を全面的に改訳した新版)

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『オリジナリティと反復』ロザリンド・E・クラウス|沢山遼:Artwords(アートワード)

ポスト・アートセオリーズ─現代芸術の語り方

著者:北野圭介
発行:人文書院
発行日:2021年3月30日
サイズ:13.2×18.8cm、280ページ

拡散する現代アートに対峙する理論とは何か。芸術の終焉、ポストモダニズム、ポストセオリーの時代を越えて、来るべき理論を探る野心作。
1980年代、アーサー・ダントーは「芸術の終焉」を唱えた。しかし、その後、現代アートはグローバル資本主義の拡大に同伴するかのように爆発的な隆盛を見せる。一方、芸術に向き合ってきた人文学はポストモダニズムの席巻の後、社会主義の崩壊、メディア技術の発展やアート自体の拡散も相俟って、理論的なものが後退してゆく。果たしていまや、この事態に斬り込む言葉はあるのか。本書では、「理論」を牽引するジャーナル『オクトーバー』『クリティカル・インクワイアリー』の変遷を軸に、現代思想とアートの複雑な絡み合いを読み解く。米国を越えて加速する世界規模の知のサーキュレーションを背景に、かつての理論的地平の乗り越えを試みる。

なお本書には、黒いコードの群れ──「クリスチャン・ボルタンスキー─Lifetime」展|北野圭介:フォーカス(2019年04月15日号)も収録。


千葉正也個展

著者:千葉正也
発行:美術出版社
発行日:2021年3月16日
サイズ:30cm、180ページ

2021年1月より東京オペラシティ アートギャラリーにて開催されていた「千葉正也個展」図録。本展インスタレーションを撮り下ろし掲載するほか、過去の代表作から最新作まで掲載した作家初の作品集。


[収録テキスト]
・インタビュー:聞き手=松井みどり (美術評論家)
・寄稿:羽鳥嘉郎(演出家)、首藤直樹(アーティスト)
・論文:堀元彰(東京オペラシティ アートギャラリー)

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千葉正也個展:オススメ展覧会(2021年03月15日号)

視覚言語と生成する身体──『夢の男』と千葉正也個展から|田中みゆき:キュレーターズノート(2021年04月01日号)

絵画を通してのみひらかれるもの──千葉正也個展/輝板膜タペータム 落合多武展|能勢陽子:キュレーターズノート(2021年03月01日号)

千葉正也個展 |村田真:artscapeレビュー(2021年02月01日号 )

リフレクティヴ・ノート(選集)

著者:田中功起
発行:美術出版社
発行日:2021年3月10日
サイズ:21cm、459ページ

アーティストの抽象的思考と具体的実践は、コロナ禍で変わったのか。日本を代表する美術家、田中功起の新刊。2020年10〜12月にアート・ソンジェ・センター(韓国、ソウル)で開催された個展「Vulnerable Histories (A Road Movie)」にあわせて刊行。コロナ禍のインタビューや書き下ろしを含めた、近年国内外で寄せた16のテキストを収録。日英韓の3か国語表記。

なぜ戦争をえがくのか─戦争を知らない表現者たちの歴史実践

編著:大川史織
著者:小泉明郎、諏訪敦、武田一義、高村亮、遠藤薫、寺尾紗穂、土門蘭、柳下恭平、後藤悠樹、小田原のどか、畑澤聖悟、庭田杏珠、渡邉英徳
みずき書林
発行日:2021年1月9日
サイズ:13.2×18.8cm、320ページ

美術、絵画、漫画、工芸、音楽、小説、写真、彫刻、演劇、研究……歴史と記憶と表現をめぐる10の対話。
敗戦から75年が経過し、当時を知る人の数は年々少なくなりつつある。体験者の記憶を継承することは急務のひとつである。しかし、〈戦争記憶の継承〉とはどういうことなのか。表現者たちはどのように戦争と出会ったのか。私たちは知らないことをどのように語り継ぐのか。体験のない人びとによる、体験のない人たちのための、〈記憶の継承〉のかたち。

光のない。 [三部作]

著者:エルフリーデ・イェリネク
翻訳:林立騎
発行:白水社
発行日:2021年3月11日
サイズ:18cm、189ページ

ノーベル文学賞作家イェリネクが、ポスト3.11の世界に捧げるレクイエム!東日本大震災と原発事故がモチーフの三部作、一挙収録[訳文一新]。既刊単行本の『光のない。』に収録された四作から「雲。家。」と「レヒニッツ(皆殺しの天使)」を割愛し、「光のない。」「エピローグ?」に「プロローグ?」を新しく追加して、Uブックス版としての刊行。日本の読者のために、自作解説「よそものとしてわたしたちはやってきて、誰もが一人のままでいる。(わたしの作品『光のない。』についてのいくつかの考え)」も特別寄稿されたワールドプレミア・エディション。

未来のアートと倫理のために

編著:山田創平
執筆者:今井朋、樅山智子、あかたちかこ、小泉明郎、内山幸子、吉澤弥生 、竹田恵子、飯田和敏、鷹野隆大、緒方江美、ウー・マーリー、住友文彦、猿ヶ澤かなえ、三輪晃義、遠藤水城、百瀬文
発行:左右社
発行日:2021年3月9日
サイズ:四六判変型、260ページ

「アートにおける倫理」をテーマにした必携の入門書
アート界のジェンダー不平等 見えなくされる芸術労働者 マイノリティと表現の自由 美術館のアイデンティティ 公平性とアートマネジメント 制作と合意 芸術実践における倫理のあり方と公平な社会の可能性を、アーティスト、アートマネージャー、キュレーター、ソーシャルワーカー、ドラァグクイーン、社会学者、弁護士らが共に探った、これからのアートを考える人に必携の一冊。

日本近現代建築の歴史 明治維新から現代まで (講談社選書メチエ)

著者:日埜直彦
発行:講談社
発行日:2021年3月11日
サイズ:13×18.8cm、424ページ

本書は、明治維新から現在に至る日本の建築史を一筆書きで描き出す試みである。日本の建築史については、これまで幾多の著作が書かれてきたが、1970年までで終わるものがほとんどで、その後の時代を包含するものはない。バブル経済に沸き立った1980年代を経て、長い不景気の時代を迎えた日本は大きな変化を受けている。ならば、21世紀の今、本当に必要なのは、この150年の歴史を通覧することにほかならない。


クリティカル・ワード メディア論 理論と歴史から〈いま〉が学べる

編著:門林岳史、増田展大
執筆者:秋吉康晴、飯田麻結、飯田豊、岩城覚久、遠藤英樹、大久保遼、喜多千草、佐藤守弘、清水知子、鈴木恒平、竹峰義和、田中洋美、橋本一径、浜野志保、原島大輔、福田貴成、堀潤之、前川修、馬定延、松谷容作、水嶋一憲、水野勝仁、光岡寿郎、毛利嘉孝、山本泰三、吉田寛
発行:フィルムアート社
発行日:2021年2月26日
サイズ:四六判、296ページ

メディアの織りなす世界を読み解く35のキーワード
ゲーム、ソフトウェア、モバイルから、資本、ジェンダー、観光、軍事まで……現在/過去の文化と社会を一望できる、メディア論の新しい教科書!


TCP Record&Review─Vol.1 バウハウスへの眼差し─EXPERIMENTS─

発行人:伊奈英次
編集・デザイン:岡田奈緒子、小林功二(LampLighters Label)
発行:東京綜合写真専門学校
発行日:2021年3月31日
サイズ:25.6×18.4㎝、130ページ

2019年に東京綜合写真専門学校ギャラリー(1F+4Fギャラリー)にて開催された展覧会「バウハウスへの眼差しーEXPERIMENTSー」の記録集。展⽰は主催者である東京綜合写真専⾨学校の校⻑・伊奈英次によるバウハウスの記録写真展「バウハウスを訪ねて」と、東京綜合写真専⾨学校を卒業した写真家 7名による新たな挑戦の場「7 EXPERIMENTS」の 2部で構成。


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東京綜合写真専門学校「バウハウスへの眼差しーEXPERIMENTSー」関連イベント:アートフラッシュニュース(2019年11月01日)

中﨑透 Connection Collection(記録集)

著者・編集:中﨑透
執筆:石川卓磨、佐藤慎也、天野一夫
写真:松本美枝子、舘かほる、中﨑透、仲田絵美
発行:中﨑透
発行日:2020年10月31日
サイズ:21cm、130ページ

2020年10月〜11月にかけて水戸のキワマリ荘/中﨑透美術館準備室(仮)で開催された展覧会「Connection Collection」の記録集。


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新型コロナ禍での行政による文化芸術支援 これまでとこれから(後編)|内田伸一:トピックス(2021年02月01日号)

TERATOTERA 2010→2020 ボランティアが創ったアートプロジェクト

監修・ディレクター:小川希
編集:西岡一正
デザイン:トール至美
翻訳:ライアン・ホームバーグ
発行:アーツカウンシル東京
発行日:2021年3月11日
サイズ:13x18.8cm、424ページ

TERATOTERA(テラトテラ)は、東京都とアーツカウンシル東京と、吉祥寺に拠点を置いて現在進行形の芸術をフィーチャーしている一般社団法人Ongoingが協働して、平成21年度よりJR中央線高円寺駅~吉祥寺〜国分寺駅区間をメインとした東京・杉並及び武蔵野、多摩地域を舞台に展開する、地域密着型アートプロジェクトおよびその発信機関の総称。本書は、アートプロジェクトTERATOTERAの2010から2020の営みをまとめたドキュメントブック。


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オルタナティヴ・アートスクール ──第4回 自分たちに必要なプロジェクトをつくる アートプロジェクトの0123|白坂由里:トピックス(2019年04月15日号 )



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2021/04/14(水)(artscape編集部)

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カタログ&ブックス | 2021年4月1日号[テーマ:夫妻]

テーマに沿って、アートやデザインにまつわる書籍の購買冊数ランキングをartscape編集部が紹介します。今回のテーマは、東京・世田谷美術館で開催中のアアルト夫妻とその建築に関する展覧会「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド─建築・デザインの神話」にちなみ「夫妻」。「芸術・アート」ジャンルのなかでこのキーワードに関連する、書籍の購買冊数ランキングトップ10をお楽しみください。
ハイブリッド型総合書店honto調べ。書籍の詳細情報はhontoサイトより転載。
※本ランキングで紹介した書籍は在庫切れの場合がございますのでご了承ください。

「夫妻」関連書籍 購買冊数トップ10

1位:愛の手紙 作曲家・古関裕而と妻・金子の物語

編集・発行:マガジンハウス
発売日:2020年4月23日
サイズ:29cm、95ページ

明治末期に福島市で誕生した古関裕而は、5000曲以上の曲を世に送り出した、昭和を代表する作曲家だった。
2020年度前期放送のNHK連続テレビ小説『エール』のモデルとなった古関夫妻の足取りを追うことで、ドラマを観ながら、大正から昭和への時代背景も楽しむことができます。巻頭には連続テレビ小説の内容解説と、主役である窪田正孝さんとヒロイン・二階堂ふみさんの最新インタビューを掲載。古関裕而の偉業を支えたのは、文通によって心を通わせ、後に妻となった金子の存在だった。結婚前の恋文と当時ならではの心温まるやりとり、大正時代のエピソード、作曲家見習い時代、戦争を乗り越え、「平和の祭典」である1964年の東京オリンピックのために「オリンピック・マーチ」を作曲するまでのストーリーがページ内に。聴き覚えのあるメロディや、怪獣映画『モスラ』での主題歌、美空ひばりや島倉千代子など日本コロムビアの人気歌手と古関メロディの秘話、『紺碧の空』他スポーツ応援歌のこぼれ話も交えて。夫婦の軌跡を多彩な図版を添えてご紹介。
古関夫妻が子ども時代を過ごした大正時代や、新婚時代を過ごした昭和初期の文化などについてもわかりやすく解説。古関裕而の故郷・福島市のガイドと金子の故郷・豊橋市のガイドも。大正昭和の歴史好きも朝ドラファンも必携の一冊がここに!


2位:猪熊弦一郎のおもちゃ箱 やさしい線

監修:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、ミモカ美術振興財団
発行:小学館
発売日:2018年2月26日
サイズ:22cm、256ページ

日本を代表する洋画家の初の物語作品集。
パリでマティスに師事し、藤田嗣治には「ちゃん」づけで呼ばれる仲だった猪熊さんは、イームズ夫妻やイサム・ノグチなど、多くの人から愛されました。自由な絵を描く、自由な人でした。道端で拾ったゴミも、お菓子の包み紙も、猪熊さんの手にかかれば美しいオブジェになりました。常に二人三脚だった妻の文子さんをモデルに、たくさんの絵を描きました。描く対象はいつでも「自分の愛するもの」で、90歳で亡くなるまでロックを聴きながら、明るく明るく生きました。三越の包装紙を見たことはありますか? あの「華ひらく」は、いのくまさんと「アンパンマン」の作者、やなせたかし氏のコラボレーションによるものです。
本書は、物語とともに時代を追って紹介する数々の楽しい作品や、世界中で集めたビンや小物などのセンスあふれるコレクション、ガラクタを集めてつくった不思議なオブジェたちに大好きだったモチーフの猫や鳥のスケッチブックなど、見ているだけで明るい気持ちになる作品と、心温まる物語が詰まった一冊です。さらに、84年に刊行し、長らく復刊が求められていた『画家のおもちゃ箱』も特別再収録しています!


3位:すぐわかる正倉院の美術 見方と歴史 改訂版

著者:米田雄介
発行:東京美術
発売日:2019年10月12日
サイズ:21cm、135ページ

天平文化の粋を伝える聖武天皇夫妻遺愛の品々を中心に、東大寺の儀式用品や文書、武具など約9000件の宝物を収めた正倉院について、代表的宝物の見どころと特質、その歴史を簡潔にまとめた決定版ガイドの新装増補。



4位:星野道夫と見た風景(とんぼの本)

著者:星野道夫、星野直子
発行:新潮社
発売日:2005年1月
サイズ:21cm、125ページ

クマを憎んではいません──。星野道夫がヒグマの事故で急逝して8年。直子夫人が夫妻で過ごした5年半を初めて追想する。撮影同行時の作品を中心に名カット110余点を掲載。写真家、夫、そして父として生きた星野が今、蘇る。



5位:古伊万里入門 佐賀県立九州陶磁文化館コレクション 珠玉の名陶を訪ねて─初期から爛熟期まで Koimari: An Elegant Porcelain

監修:佐賀県立九州陶磁文化館
発行:青幻舎
発売日:2007年9月
サイズ:15cm、255ページ

伊万里焼の草創期、爛熟期、後期までを年代順に通観し、古伊万里の特徴と様式の変化を紹介する。佐賀県立九州陶磁文化館所蔵品の中から柴田夫妻コレクションを含む300余点を解説とともに掲載し、その魅力を探る。



6位:《原爆の図》のある美術館 丸木位里、丸木俊の世界を伝える(岩波ブックレット)

著者:岡村幸宣
発行:岩波書店
発売日:2017年4月5日
サイズ:21cm、63ページ

原発と原爆を一体のものとして批判していた丸木位里・丸木俊夫妻の共同制作〈原爆の図〉はいかに描かれたのか。2人の生い立ちと遍歴、美術史的にも再評価が進む〈原爆の図〉について、丸木美術館の学芸員が語る。



7位:モーツァルト演奏法と解釈 新版

著者:エファ・バドゥーラ=スコダ、パウル・バドゥーラ=スコダ
監訳:今井顕
翻訳:堀朋平、西田紘子
発行:音楽之友社
発売日:2016年4月21日
サイズ:23cm、669ページ

ウィーンの伝統を受け継ぐ巨匠バドゥーラ=スコダ夫妻が、モーツァルト作品の演奏法と解釈を、長年の研究をもとにまとめる。装飾音や強弱など、モーツァルト様式の実践的なアドバイスが満載。参考音源はダウンロード可能。



8位:文様別小皿・手塩皿図鑑 佐賀県立九州陶磁文化館柴田夫妻コレクション

監修・執筆:大橋康二
発行:青幻舎
発売日:2014年5月26日
サイズ:15cm、311ページ

佐賀県立九州陶磁文化館柴田夫妻コレクション(国登録有形文化財)より、小皿・手塩皿906点を厳選し、項目ごとに解説・作品データを付す。古伊万里の深い世界を堪能できる一冊。



9位:美の朝焼けを通って シュタイナーの芸術観

著者:今井重孝、はたりえこ
発行:イザラ書房
発売日:2019年7月8日
サイズ:21cm、126ページ

シュタイナー夫妻が生み出した舞踏芸術「オイリュトミー」は、なぜ未来の芸術と呼ばれるのか。シュタイナー思想の2人のスペシャリストの対談と往復書簡を収録。オイリュトミーと脳波の関係、意識魂の時代についても解説する。



9位:ゴースト・ハンターズ完全読本 怪異を追う者たち─『事件記者コルチャック』から『死霊館』まで

編著:尾之上浩司
発行:洋泉社
発売日:2018年2月8日
サイズ:21cm、271ページ

カール・コルチャック、エド&ロイレン・ウォーレン夫妻という、2大ゴースト・ハンターズの軌跡と活躍を網羅。ほか、おすすめのゴースト・ハンターもののドラマ、ロバート・E・ハワードの未訳小説「同志の刃」も掲載。



9位:西表島・紅露工房シンフォニー 自然共生型暮らし・文化再生の先行モデル

著者:石垣昭子、山本眞人
発行:地湧社
発売日:2019年3月10日
サイズ:19cm、294ページ

西表島でさまざまな天然素材を使って手紡ぎ手織り、草木染の工房を営む染織家、石垣昭子・金星夫妻の暮らしと仕事をまとめた一冊。その作業の全貌を写真と共に紹介するほか、自然観や生き方についてのインタビューなども収録。





artscape編集部のランキング解説

世田谷美術館で2021年3月20日から始まった「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド─建築・デザインの神話」展。フィンランドを代表する建築家アルヴァ・アアルト(1898-1976)とその妻のアイノ(1894-1949)が出会い、活動を共にした25年間に焦点を当て、二人のものづくりの軌跡を俯瞰する展覧会です(※展覧会図録はこちら)。
「夫妻」というキーワードで抽出された今回のランキングには、古今東西さまざまな夫妻が登場。彼・彼女らの、芸術における創造的な連帯のあり方や関係性の多様さが浮かび上がってきました。1位に輝いた『愛の手紙 作曲家・古関裕而と妻・金子の物語』をはじめとして、その夫妻が生きた時代特有の空気も時折見えてきます。
注目してみたいのは、佐賀県立九州陶磁文化館に計10,311点にも及ぶ有田磁器のコレクションを寄贈した、柴田夫妻(柴田明彦[1940-2004]・祐子[1944-]両氏)に関係する本が2冊ランクインしているところ(5位、8位)。体系的かつ網羅的に収集されたそのコレクションは学術的にも非常に重要なコレクションとして位置付けられており、佐賀県立九州陶磁文化館には柴田夫妻コレクション専用の展示室も常設されています。柴田夫妻の収集にかける並々ならぬ情熱を入り口に、古伊万里の魅力に触れてみるのもまた一興。
時代を大きく遡って奈良時代、『すぐわかる正倉院の美術 見方と歴史 改訂版』(3位)においてゆかりの品を多数取り上げられている聖武天皇と光明皇后も、ある意味「コレクター夫妻」と呼べるのかもしれません。聖武天皇を亡くした光明皇后が、彼の冥福を祈って愛用の品を収めたのがその始まりとされる正倉院。先述のガイドブックは「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」などをはじめとした美麗な美術工芸品の数々をそのディテールまで楽しめる一冊です。
共に制作活動を展開するアーティスト/職人夫妻の姿をテーマにした本もやはり複数ランクイン。『《原爆の図》のある美術館 丸木位里、丸木俊の世界を伝える』(6位)では、共同制作《原爆の図》を「誰でもいつでもここにさえ来れば見ることができるように」と、埼玉県東松山市に原爆の図丸木美術館をオープンさせた画家の丸木位里(1901-95)・俊(1912-2000)夫妻の生涯や、3.11以降改めて注目が集まる《原爆の図》の制作背景や過程について、丸木美術館の学芸員の視点を通して語られます。一方で、西表島で染色織物工房を営む石垣金星(1946-)・昭子(1938-)夫妻の暮らしを追いかけた『西表島・紅露工房シンフォニー 自然共生型暮らし・文化再生の先行モデル』(9位)は、西表島の生き字引きでもある二人の、つくり手としてのサステナブルな姿勢が示唆に富む一冊。
夫妻という単位で仕事を残している上記の人々から共通して感じられるのは、補い合うという行動のナチュラルさ。今回は「夫妻」縛りでランキングを見てみましたが、今後さらに多様な連帯のしかたが広がることも、併せて願いたいところです。


ハイブリッド型総合書店honto(hontoサイトの本の通販ストア・電子書籍ストアと、丸善、ジュンク堂書店、文教堂など)でジャンル「芸術・アート」キーワード「夫妻」の書籍の全性別・全年齢における購買冊数のランキングを抽出。〈集計期間:2020年3月10日~2021年3月9日〉

2021/04/01(木)(artscape編集部)

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