artscapeレビュー
SYNKのレビュー/プレビュー
横尾忠則「肖像図鑑/HUMAN ICONS」
会期:2013/09/28~2014/01/05
横尾忠則現代美術館[兵庫県]
昨年、開館1周年を迎えた横尾忠則現代美術館で、同氏のポートレイト作品に特化した展覧会が行なわれた。その肖像画の対象は、俳優、ミュージシャン、芸術家、家族、作家たちと幅広く、表現媒体も、絵画、イラスト、デザイン原画、ポスター、版画と多種多様。1960年代から70年代にかけてグラフィック・デザイナーとして活躍していた横尾は、仕事を通じて多くの著名人たちと知己を得た。高倉健や浅丘ルリ子ら映画スターたちを写したイメージは、彼の創造力や思い入れと時代の香りとが相まって、異彩を放っている。また近年における、明治時代以降の文壇の作家たちを一堂に描いたシリーズ192点は圧巻である。とりわけ今回、デザイナー時代の本領が発揮された作品群が、三宅一生とコラボレーションした仕事。横尾は1977年から99年までイッセイ・ミヤケのパリ・コレの招待状のデザインを手掛けた。一連の三宅のポートレイトは、油絵作品と異なる、遊び心、軽やかさ、即興的な感覚が直接的に観る者に伝わる。デザイナーとしての横尾のセンスに唸らされた。[竹内有子]
2013/12/29(日)(SYNK)
乙女デコ&京都モダンのデザイナー:小林かいち展
会期:2013/10/03~2013/12/24
竹久夢二美術館[東京都]
大正後期から昭和初期にかけて京都・さくら井屋が版元となった絵葉書・絵封筒のデザインでのみ知られ、数年前までは謎のデザイナーであった小林かいち。京都での展覧会をきっかけに2008年に遺族(次男)が名乗り出て、大正末期に亡くなったとされていた画家が京都で着物の図案を手がけていた小林嘉一郎(1896-1968)であることがわかった。かいちの作品に関心が持たれるようになったのはこの20年程のことであり、これまでに開催された展覧会や論考を見ると、謎であったデザイナーの姿が一気に具体的な人物として描かれるようになった様はとても興味深い。謎の人物であった時期には、京都アール・デコのデザイナーとして、同時代の他のデザイナーたちの作品などの文脈においてその作品の説明が試みられていた。人物が判明したことで、かいちが京都市立絵画専門学校で学んだことや住んでいた場所などがわかってきた。今回の展覧会では、保科美術館のコレクションを含めた作品を紹介し、描かれたモチーフを読み解くと同時に、かいちとその作品を育んだ同時代の京都を紹介している。人物が同定されたとはいえ、かいちとその仕事にはまだまだ多くの謎が残されているという。次男・嘉寿氏が生まれた1944年には、かいちはすでにさくら井屋の仕事を止めており、遺族もかいちがデザインを手がけていたことは知らなかったという。彼がモダンな図像がどのようにして生み出されたのか。何をイメージ・ソースとしていたのか。絵葉書・絵封筒のデザイナーとしてのかいちの謎はむしろ深まったのかも知れない。[新川徳彦]
2013/12/19(木)(SYNK)
ニッポンの少女まんがの元祖だヨ!:松本かつぢ展
会期:2013/10/03~2013/12/24
弥生美術館[東京都]
抒情画家、童画家、グッズ・デザイナーとして活躍した松本かつぢ(1904-1986)の作品展。画家として手がけたジャンルの多さと、その表現様式の多彩さに驚かされる。本展でとくに焦点をあてられているのは、少女漫画家としての松本かつぢ。最近の調査で、かつぢが昭和初期から先駆的な漫画作品を描いていたことが明らかになってきたという。『少女の友』昭和9年4月号付録漫画「?(なぞ)のクローバー」のヒロイン「フクメンサン」のかっこいいこと。昭和初期のストーリー漫画は田川水泡ぐらいしか知らなかったのであるが、同時代の漫画家たちと比較したかつぢ作品の立体的な描写、躍動感溢れる紙面構成のすばらしさは、すでに漫画評論家・夏目房之介が指摘しているところ
2013/12/19(木)(SYNK)
クヴィエタ・パツォウスカーとチェコの絵本展
会期:2013/12/06~2013/12/27
美術館「えき」KYOTO[京都府]
チェコの女性絵本作家、クヴィエタ・パツォウスカー(1928- )とチェコ絵本の世界を紹介する展覧会。「絵本」というと、ふんわりと優しく、穏やかな気持ちになれる本(絵)を想像する人が多いはずだが、彼女の作品は強烈な色彩と幾何学的造形といった、絵本の概念を超える斬新なものが多い。時にはフォーヴィスムを、時には構成主義を連想させる。パツォウスカーは「(絵本の)絵は文章の説明ではない。それ自体、視覚表現である」と言っているが、まさにそのとおりで、子どものためというより、大人のための絵本という気がした。本展ではパツォウスカーの代表作とともに、チャペック兄弟やヨゼフ・ラダなどの作品によって、パツォウスカーを育んだチェコ絵本の歴史を知ることもできる。[金相美]
2013/12/17(火)(SYNK)
匠の技に学ぶ──日本の大工と絵図・道具 in 大阪
会期:2013/11/30~2013/12/23
大阪市立住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」[大阪府]
鑿(のみ)、鉋(かんな)、鋸(のこ)など、日本各地の職人たちが愛用した大工道具を紹介する展覧会。あわせて建築絵図や技術書、模型なども展示している。職人たちの技が光る名品(完成品)を作品として展示・鑑賞するのが通常であると言えるなら、その制作過程を支えた道具の展示はやはり珍しい。もちろん、道具そのものを作品として見ることもできるが、同展を珍しいと言ったのは道具そのものではなく、道具をとおしてその使い手である大工の仕事に焦点を当てているからだ。また、よく手入れされた古い道具を見ていると大工の魂が感じられる。[金相美]
2013/12/13(金)(SYNK)