artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

超京都 現代美術@杉本家住宅

会期:2010/05/15~2010/05/16

[京都府]

今年重要文化財指定となる杉本家は270年の歴史があるのだという。京町家と呼ばれるこの建物を会場にしたこちらのアートフェアは建物、空間自体がまさに「超京都」であり、京都ならではのアートフェアといえる。11画廊が参加して、古い家屋の床の間、仏間、庭、土間、応接間など各所に作品を展示。アートフェアというよりも、全体に展覧会の展示として楽しむような見応えがあり、どの空間も素晴らしかった。日も落ちた頃の暗い中庭のギャラリーキャプションの展示もさることながら、ギャラリー小柳の展示は特に美しく感動。床に腰を下ろし、手に取る距離で作品を眺めるよろこびも味わえる会場だった。

2010/05/14(金)(酒井千穂)

超京都 現代美術@杉本家住宅

会期:2010/05/15~2010/05/16

杉本家住宅[京都府]

京都市の文化財であり、今年7月には国の重要文化財に指定される杉本家住宅。江戸時代の豪商のたたずまいをいまに伝えるこの町家で、一風変わったアートフェアが開催された。1週間前に開催された「アートフェア京都」と比べても場の独自性が際立っており、まさに京都以外ではあり得ないイベントであろう。フェアなので本来は売れ行きに関心を持つべきだが、ついつい展示に目が行ってしまう。床の間で茶器と抽象絵画の競演を演出した児玉画廊、仏間を生かしたMATSUO MEGUMI+VOICEGALLERY pfs/w、和室と親和性の高い作品を天井から吊るして印象的な展示を行なった東京画廊+BTAP、店の間と土間でネオン作品や人工的な着色のオブジェを展開したSUPER WINDOW PROJECTなど、挙げ始めたらきりがない。なかでも圧巻だったのが、杉本博司と須田悦弘を擁したギャラリー小柳。前栽を臨む座敷という最高の空間を生かして、見事というしかない美空間を出現させた。こうした各画廊のプレゼン合戦(意地の張り合い?)が拝めたのも、本イベントならではの楽しみだった。

2010/05/14(金)(小吹隆文)

大成哲 Glass Arts from 07 to 10

会期:2010/03/23~2010/05/28

チェコセンター(チェコ大使館内)[東京都]

ガラスを駆使するアーティストとして知られる大成哲の個展。ガラスの表面に入れたヒビによって世界地図を描いた作品などを発表した。暗い空間のなかで作品を見せることによってガラスの透明性を強調し、床にばら撒いたガラスの破片によってその脆さを効果的に表現していた。世界はかくも美しく、儚いものか。

2010/05/12(水)(福住廉)

富士山 展

会期:2010/04/28~2010/05/16

ニュートロン東京[東京都]

富士山をテーマとしたグループ展。三瀬夏之介や山本太郎など9人のアーティストが絵画や映像などで富士山を表現したが、全体的に記号としての富士山を単純に持ち込んだ作品が多く、まるで物足りない。富士山とはいうまでもなく「日本」を象徴する役割を背負わされた表象であり、それはつまりさまざまな思想的な立場が激突する闘技場でもある。であれば、作品を見る側としては、そのような闘争こそ作品なり展覧会に見出したいという点がひとつ。もうひとつは、そうしたことを芸術に期待する考え方がすでに時代錯誤だとしても、闘争的な側面から富士山を開放するだけの別の文脈が用意されているわけでもないということ。ただ記号としての富士山が宙ぶらりんのまま作品のなかで消費されているという状況が、はたして何を意味しているのか、最後まで理解に苦しんだ。

2010/05/12(水)(福住廉)

金未来展 第一章~第三章「物語の幕開け(狭間に埋もれた心理の空洞)」

会期:2010/05/11~2010/05/23

neutron kyoto[京都府]

群青色が混じる闇の背景に一人の女性が描かれた一連の大きな絵画。深い奥行きをもつ闇の静寂といったが雰囲気があり、そのため一見穏やかな印象もあるのだが、近づいてみると驚く。胸騒ぎがするような繊細な描線の夥しい数と微妙な色の使い分け。描かれた女性の表情や色彩、線の流れの間に誘い込まれていくような気分だ。まだ20代の若い作家で発表経験も浅いそうだが、筆力というのか、繊細な描線で表現されるその作品世界は大きな存在感と魅力を放っていた。

2010/05/11(火)(酒井千穂)