artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
中島麦 展
会期:2010/04/27~2010/05/02
ギャラリーはねうさぎroom4[京都府]
中島麦は精力的に個展を開催しているが、今回は以前の印象とは異なるイメージで新鮮だった。電車の窓から見える景色の流れていく様子が独特の色彩と線で表現されている。画面に描かれた存在は図にも地にもならない曖昧さで、けれども彼が目にした風景をなんとなく想像できるような、既視感を覚えるイメージ。目でしっかりとはとらえきれなかったはずの記憶のイメージを色で再現する一連の作品には叙情的な雰囲気もあり、会場を出てからもインパクトを引き摺った。
2010/04/25(日)(酒井千穂)
徳島LEDアートフェスティバル2010
会期:2010/04/17~2010/04/25
徳島市ひょうたん島一帯[徳島県]
JR徳島駅がある市内中心部の中州、通称「ひょうたん島」の河岸と周辺地区に、LEDを用いたアート作品が多数展示された。作品は、招待作家4人を含む27点。会期中はイベントも多数開催され、周遊船の就航やランドマークのライトアップもあって、市中の夜が華やかに演出されていた。正直、招待作家以外は玉石混交で、なかには稚拙な作品もあった。しかし、日が沈むにつれ河岸に市民が集い、思い思いに夜景を楽しむ様子を見ていると、市民のお祭りとしては上出来なのかなとも思う。今後も継続されるのか定かではないが、じっくり育てていけば市民に愛される風物詩的なアートイベントになるかもしれない。
2010/04/24(土)(小吹隆文)
舞台裏─物語へようこそー
会期:2010/04/13~2010/05/09
京都芸術センター[京都府]
京都芸術センターはやっぱり面白いなあ。今回は、二人の舞台美術家の作品、つまり実際に舞台公演のために製作された舞台美術がまるごとギャラリーに出現。舞台美術の空間を実際に歩き回ることができるなんて、なかなかない体験。舞台が完成するまでの構想スケッチをはじめ、模型、建材や部品のリスト、制作の見積書(!)までぎっしり展示されていた会場はまさに舞台裏の現実があり生々しい。物語の世界と現実の世界を出入りする?というとなんだかステキな響きにも思えるが、ともかくすさまじい仕事量をこなさなければならないたいへんな仕事なのがわかる。舞台美術家の仕事って神業だなあ。会期中には、この展示空間で実際に上演される予定の舞台の公開稽古も開催された。
2010/04/24(土)(酒井千穂)
公開制作49:長谷川繁
会期:2010/04/10~2010/07/11
府中市美術館[東京都]
国芳もいいが、どっちかというとこっちの絵を見たかったのだ。長谷川繁は90年代にショウガや肉を描いた絵画でデビュー。なぜショウガや肉なのかさっぱりわからなかったが、その筆勢や色彩がとても魅力的だった。その魅力はいまでも変わらず、変わったことといえばモチーフをいくつか組み合わせて奇妙なイメージを形成するようになったこと。たとえばキュウリとバナナをつなげて文字のように見せたり、マグリットのようなシュールなイメージを現出させたり。どうやら長谷川にとってモチーフとは、絵画を成り立たせるための単なるきっかけであって、別になんでもよかったみたい。残念なのは、今日は本人が不在のため公開制作室がロックされ、ガラス越しにしか作品が見られなかったこと。でも7月までやってるから、次の「ノーマン・ロックウェル展」(5/19~7/11)のときにまた来よう。
2010/04/24(土)(村田真)
歌川国芳
会期:2010/03/20~2010/05/09
府中市美術館[東京都]
土曜の午後とはいえ、ふだんは閑散とした郊外の公立美術館にしては異例のにぎわい。さて、国芳というと、巨大な骸骨が登場したり、アルチンボルド風の合わせ絵を工夫したり、奇想の系譜に連なる戯画家のイメージが強いが、その奇想が天保の改革による表現の弾圧に対処するサバイバル戦術だったと知ると、江戸の浮世絵師のたくましさとしたたかさを感じざるをえない。内容といい点数といい、そこそこ楽しめる展示ではあったが、やはり浮世絵は浮世絵、サイズも色彩も物質感もものたりなさが残る。
2010/04/24(土)(村田真)