artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
トーキョーストーリー
会期:2010/05/01~2010/05/23
トーキョ ワンダーサイト本郷[東京都]
トーキョーワンダーサイト(TWS)で行なわれたレジデンス事業の成果報告展。佐々木加奈子、志村信裕、村上華子ら8組の出品。TWS渋谷での報告展がストリートアート系でまとまっていたのに比べ、こちらはとりとめがなく、いまひとつ伝わってくるものがなかった。ま、東京滞在組だけでなく海外派遣組も合わせた混成部隊だからしかたないが。唯一、最後の部屋の村上のインスタレーション《澤田家の火事》は、作品の構造がきわめて立体的でわかりやすかった。床に火事で焼けこげましたみたいな柱や家具や鍋やコップが置かれ、正面の壁には火事にあったとおぼしき女の子(澤田さん?)が「焼け残ったものをもらってください」と訴える映像が流れている。ここまでならひょっとしたら本当の話かもと信じてしまいかねないが、しばらく映像を見てると、女の子がエスカレーター上で、あるいはスパゲティを食べながら、まったく同じセリフを繰り返しているのがわかり、演技だとバレる。その映像の上に携帯の番号が書かれている。この作品を完結させるには電話してみるべきだろう(しなかったけど)。その前に、インスタレーションをもう少し見られるようにしてね。
2010/05/11(火)(村田真)
アートアワードトーキョー丸の内2010
会期:2010/04/29~2010/05/30
行幸地下ギャラリー[東京都]
全国の美大・芸大の卒展からの選抜展。開館時間の1時間以上も前に行ったら開いていた。というか、ウィンドーギャラリーだから照明さえついていればいつでも見られるだろうとは思っていたのだ。が、なるほど映像はオンされてなかった。ま、映像はハナから見るつもりはなかったので、わずらわしくなくていい。メインは絵画で、なかなかの粒ぞろいだが、とくに松隈無憂樹、佐藤翠、中山明日香、尾竹隆一郎(水彩)がよかった。うち、松隈は佐藤直樹賞、佐藤は小山登美夫賞を受賞。ちなみにグランプリは松島俊介の映像作品だった。
2010/05/11(火)(村田真)
佐藤雅晴 Bye Bye Come On
会期:2010/05/08~2010/05/29
イムラアートギャラリー[京都府]
エスカレーターを昇り続ける女性の後ろ姿のアニメ、林の中でウサギとクマの着ぐるみが手招きをするアニメ、そしてスチール作品が5点と映像がもう1点出品された。実写映像をフォトショップ上でトレースし、ペンタブレットで描いた作品は、初期段階で実写データを消去し、イメージだけが画面に定着している。そのためだろうか、現実と非現実の中間を見せられているような不安定な感覚がぬぐえない。2008年に「液晶絵画」という展覧会があったが、佐藤の作品もまさにその一例だ。今後はこうした表現がどんどん増加するのであろう。
2010/05/11(火)(小吹隆文)
「ダヴィンチの森 レノンの瞑想」山部泰司、美崎慶一
会期:2010/05/04~2010/05/16
gallery morning kyoto[京都府]
二つの大きなアートフェアもまもなく開催、という頃、「京都はアートフェアの季節。gallery morning kyotoもひとりアートフェアやります。」というTwitterのつぶやきを見つけ、思わず吹き出してしまった。ギャラリーモーニングはちょうど一年前にオープンした画廊。見にいかねば!と思わせられるチャーミングなつぶやき。この「一周年記念のアートフェア」という企画と同時に山部泰司、美崎慶一の絵画展も開催中だった。「ダヴィンチの森 レノンの瞑想」という二人展のタイトルは、それぞれの絵画に描かれた小さなモチーフや、その制作のテーマから画廊オーナーが連想したものだそう。中世や近代の名画に描かれた森の道のイメージをモチーフにした、山部泰司の一連の絵画は、「描かれた風景」の物語として実際の時間を追うように展開する。絵画の画面に表われる画家の記憶や、「風景」として表われる時代ごとの時間や自然と、描かれた情景に重層的な時間の奥行きを感じさせる作品。一方、日常的な風景を描く美崎慶一の表現は、余白と描かれた対象の関係が絶妙に時間の経過やその意味を示す。そっと見る者にクイズを出すようなおしゃれなセンスが画面にうかがえてこちらも楽しい。奥のスペースで開催されていた小さなアートフェアの作品群も、「ダヴィンチの森 レノンの瞑想」もとても清々しく上質な展覧会だった。
2010/05/09(日)(酒井千穂)
第84回国展
会期:2010/04/28~2010/05/10
国立新美術館[東京都]
ワケあって国画会の展覧会を見に行く。国画会は1918(大正7)年に文展(日展の前身)から独立した団体。リアルな具象画が大半を占める日展とは違って抽象的な絵が多いが、でも純粋抽象は少なく、半具象・半抽象だったり、具象と抽象が混在した中途半端な作品が目立つ。ほかにも、なぜか独立美術協会の絹谷幸二みたいなプレJポップとも呼ぶべきマンガチックなイメージと、漫画家志望だったけど才能がなかったから画家になりましたみたいな開き直りと、レリーフ状やシェイプトキャンヴァス状の画面が目につく。20世紀なかばなら「先端」と呼ばれたかもしれないが。彫刻ものぞいたら、こちらはてんでバラバラ。戸谷成雄みたいなチェーンソー愛好家が約2名いたが、ひとりはなんと石をチェーンソーで彫ってる! いやー美術っておもしろいですねえ。
2010/05/09(日)(村田真)