artscapeレビュー
山本直彰 展
2009年09月01日号
会期:2009/07/11~2009/09/06
平塚市美術館[神奈川県]
80年代以来、現代美術としての日本画を一貫して追求してきた山本直彰の回顧展。若かりし70年代に描かれた初期の作品からプラハ滞在を契機にはじめられた《Door》のシリーズ、そして最新作である《帰還》シリーズまで、ドローイングも含めて、あわせて60点あまりが発表された。《IKAROS》や《PIETA》といった題名からも想像されるように、山本の作品は神話的・宗教的なイメージにもとづいているものが多いように思われるが、画面に描き出されたイメージは、炸裂、瞬発、墜落、阻止などの言葉によってとらえられ、その点では、むしろサブカル的想像力と大きく重なっているようにも見えた。もちろんサブカル的想像力が神話的なイメージを流用しているのであって、決してその逆ではないのだが、しかし、村上隆の台頭より以前に、じつは日本画とサブカルチャーは出会っていたのではないだろうか。それが「ネオ・ポップ」というムーブメントを新たに捏造することによってではなく、日本画というジャンルの内部で、しかも具象性より抽象性を優先するかたちでなされていたことに、重大な意味があると思う。
2009/07/30(木)(福住廉)