artscapeレビュー

神々のたそがれ

2015年03月15日号

アレクセイ・ゲルマン監督の遺作『神々のたそがれ』を見る。ある惑星が舞台というSF的な設定だが、まったく未来的ではなく、暮らしぶりやその背景となる建築は、まるで西欧の中世だ。しかも全編にわたって、ただならぬ悪臭が漂い、細部の描写に至るまで驚くべき実在感がある。絶えず、視界をさえぎる障害物があるという独特の映像だ。地球人は、この惑星の人々から神と崇められるのだが、ただただ、世界の退行を傍観するしかない。しかし、ここで起きている反知性主義の動向は、遠い世界の出来事だと思えない。

2015/02/12(木)(五十嵐太郎)

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