artscapeレビュー

水森亜土 展~どうしてずっとアドちゃんが好きなの?~

2010年11月01日号

会期:2010/10/01~2010/12/26

弥生美術館[東京都]

イラストレーター・水森亜土の回顧展。イラストレーターのみならず、歌手、女優、画家、タレントなど多才な活動を繰り広げる亜土ちゃんの全貌に、イラストレーションの原画やテレビ出演の映像、幼少時に影響を受けた視覚資料、雑誌の連載記事など、さまざまなアプローチから迫った。じっさい、「絵は天職、歌は本職、女優は内職」と語っているように、亜土ちゃんのクリエイションは多岐に渡っており、その多方向性が、イラストレーションの歴史から彼女を外す事態を招いているのかもしれない。挿絵や図解など、文字を説明するという補助的な役割からイラストレーションという自立的なジャンルとして成熟させるうえでは、そうした排除の政治学もあるいは必要なのだろう。けれども、亜土ちゃんのイラストが大衆に広く愛されてきたことは厳然たる事実であり、その事実を無視した「歴史」にはたして何の意味があるのか、よくわからない。むしろ、彼女のイラストが亜土ちゃんというキャラクターと不可分であることを考えれば、水森亜土は岡本太郎や草間彌生、石田徹也、山口晃などと並ぶ、「アイドル・アーティスト」として歴史化するのがふさわしい。

2010/10/17(日)(福住廉)

artscapeレビュー /relation/e_00010604.json l 1223871

2010年11月01日号の
artscapeレビュー