2018年10月15日号
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artscapeレビュー

大阪市立東洋陶磁美術館「森と湖の国──フィンランド・デザイン」展

2013年07月01日号

会期:2013/04/20~2013/07/28

国立国際美術館[大阪府]

本展は、フィンランドの18世紀後半から現代にかけてのガラス・陶磁器約150点を展示したもの。フィンランドはアイスランドと並んで、世界でもっとも北に位置する国のひとつ。南部と西部の海域には多くの島々が点在し、大小6万を超える湖があり、森林全体の面積は国土の7割を超える。厳しいながらも豊かな自然環境は、人々のあいだに自然に対する畏敬の念と親近性を育んできた。これは、本展の出展作の多くに自然のモチーフが用いられていることからも首肯されよう。フィンランド・デザインの特徴とは、ひとつに「手仕事を基礎とするものづくり」の伝統、もうひとつが「機能性」。アルヴァ・アールト(1898-1976)のデザインで現在も生産されている、湖の形状の花瓶《アールトの花瓶 9750/3030》や、入れ子状に配置することで花のように見える《アールト・フラワー 3034A-D》のように、芸術性と機能性を兼ね備えたプロダクト・デザインが1930年代以降伝統となっていく。ガラスのみならず陶芸、銀細工、木工、またグラフィック等の多くの分野で活躍、47年からはカルフラ・イッタラ社に所属したタピオ・ヴィルッカラ(1915-85)のデザイン、《カンタレッリ(アンズタケ)3280》。フィンランドの深い森のイメージを強く喚起するこの花瓶には、有機的な形態に繊細な彫りが入ることで、生き生きとした生命感を感じさせる。また、「フィンランド・デザインの良心」と呼ばれた、カイ・フランク(1911-89)の食器シリーズ《キルタ》などは、盛り付けや保存、器同士の組合せや片付けの用にまで配慮がなされた好例。こうした機能追及の背景には、デザイナーたちが伝統を踏まえつつ、使用者の視点を重視する進取の気質が感じられる。初夏の季節にガラスの涼やかさが目に心地良く、フィンランドの豊かな生活文化を感じ取れる展覧会である。[竹内有子]

2013/06/05(水)(SYNK)

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