2018年04月15日号
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artscapeレビュー

KYOTO EXPERIMENT 2016 AUTUMN 小泉明郎 CONFESSIONS

2016年12月01日号

会期:2016/10/28~2016/11/27

京都芸術センター[京都府]

本展は「KYOTO EXPERIMENT 2016 京都国際舞台芸術祭 AUTUMN」の展示プログラムのひとつとして開催された。なぜ舞台芸術祭で小泉明郎なのかと思ったが、彼の映像作品が持つ演劇性に着目したらしい。展覧会のテーマは「告白」で、作品は《忘却の地にて》と《最後の詩》の2点が選出された。筆者が注目したのは前者である。同作では、第2次大戦中に非人道的な任務に就いた元日本兵のトラウマが、独白(音声)と風景の映像で綴られる。時々言葉に詰まり、必死に思い出そうともがく男。その緊迫感に、見ているこちらも心が締めつけられる。ところが背面に回って驚かされた。じつは、交通事故で脳に損傷を受け記憶障害を抱えた男性が、元日本兵の証言を暗記して語っていたのだ。裏切られた! 落胆、憤り、虚脱感が一挙に押し寄せる。なんだこれは。ブラックユーモアにもほどがあるだろう。しかし冷静に考えてみると、こちらが勝手に思い込んでいただけだ。元日本兵の言葉も、それ自体に偽りはない。本作は、人間の記憶や心象がどのように形作られ、どのような危うさを持っているかを伝えている。このヒリヒリした感覚、人間の痛いところをわざと突いてくる感じは彼独特のものだ。作品を見るといつも嫌な気持ちにさせられる。でもけっして嫌いにはなれない。小憎らしいアーティストだ、小泉明郎は。

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2016/10/28(金)(小吹隆文)

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