2018年04月15日号
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artscapeレビュー

ART×BIKE:自転車、たおやかに…

2016年12月01日号

会期:2016/10/14~2016/11/06

ギャラリー 工房親[東京都]

街歩き、路上観察を趣味とする人間からすると、自転車の速度は微妙だ。のんびり走っていても怒られない、好きなところで止められるのは、確かに自転車の利点なのだが、その速度では意外に街のあれこれを見落としてしまう。見落とさないように走っていると、ついつい進路に注意が及ばなくなってしまって危険なのだ。もちろん安全に走行しても自動車や電車による移動と比較すれば視界に入ってくる距離あたりの情報量は圧倒的に多いのだが、徒歩に比べれば少ない。またもうひとつの問題は、自転車で出かければ自転車で帰ってこなければならないことだ。レンタサイクルという手もあるのだが、どこでも借りることができるわけでなく、元の場所に戻って返却しなければならないという縛りがある。風を感じる、自然を感じる手段として自転車は好きなのだが、つまるところ街歩きに自転車は微妙なのだ。さて、こうした自転車に対する筆者の日頃の複雑な思いと本展とどう関係するのかというと、本展出品者アベキヒロカズらの作品がまさに路上観察をテーマにしたものだったからだ。ギャラリーから半径約1キロメートルを描いた布製の地図に、街角で採集したヘンなものの写真を缶バッジにしてプロットしている。移動に使われたのはA-bikeという超小型の折りたたみ式自転車。車輪の直径はわずか15センチメートルほど。重さは約7キログラムで電車やバスに持ち込んで運ぶことも容易だ。歩くよりは当然速いがそれほどスピードが出るわけでもない。特徴的な形状から無駄に衆目を集めてしまう恐れはあるが、価格を考慮しなければ街歩き、路上観察にも魅力的な乗り物と思われるので機会があれば試してみたい。
さて、本展は「自転車」を共通のテーマに、絵画、写真、グラフィック、インスタレーションなどでゆるくつながるアートの展覧会の第二弾だ。昨年の「夢走する自転車 ART×BIKE」(筆者は未見)から引き続いて本展のシンボルとして出品されているのは、マルセル・デュシャンの「自転車の車輪」を現代の自転車の車輪で再制作した「デュシャンに習いて」。アートだけではなく、ロードバイクの名品やサイクリング・ウェアまで出展されているところは、本展キュレーターの深川雅文、アートディレクターのクボタタケオの趣味が色濃く反映されている。興味引かれたアート作品のひとつは藤村豪による映像(と、それをテキスト化したもの)だ。自転車店を始めた男性に、なぜ自転車店なのかという質問を日をおいて繰り返し繰り返し尋ねるのだが、回答はそのときどきで同じ部分もあれば異なる部分もある。繰り返される同じ質問と、そのたびに生じるずれがとても面白い。[新川徳彦]

2016/10/29(土)(SYNK)

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