2018年04月15日号
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artscapeレビュー

なにで行く どこへ行く 旅っていいね

2016年12月01日号

会期:2016/11/11~2016/12/03

京都dddギャラリー[京都府]

DNP文化振興財団と京都工芸繊維大学美術工芸資料館が所蔵するポスターのなかから、「旅」をテーマに選定された作品を一堂に展示している。ポスターを通じた「旅」への誘いには、3つの切り口、「1 交通の発達」、「2 観光地とレジャーの発展」、「3 旅が喚起する感情や非日常性を演出した多様なイメージ」が用意されている。
ひとつめの観点には、旅の移動手段である鉄道・船・飛行機のモチーフが表す力強さ・豪華さ・優雅さ・速度の表現がある。例えばカッサンドルと里見宗次、さらには杉浦非水《東京地下鉄道株式会社》(1927)にみられるアール・デコの機械を愛でる表現をそれぞれ比較してみると面白い。


左:杉浦非水《東京地下鉄道株式会社》1927 右:里見宗次《日本国有鉄道》1937

二つめには、海水浴・登山・スキーや温泉地等レジャーを通じた観光地の形成プロセスに、時代性を味わって鑑賞もできる。1960年代の《太陽に愛されよう資生堂ビューティケイク》のモデル前田美波里のはつらつとした水着のイメージと、70年代オイル・ショック後の横尾忠則《湯原温泉》の神秘性を醸し出すようなイメージは、まさに対照的である。三つめに、国鉄による鈴木八朗の観光ポスター《Discover Japan》(1974)《Exotic Japan》(1983)に、現代におけるポスターの発展形をみることができる。キャッチコピーと大胆な写真で構成される画面の斬新さばかりでなく、テレビ番組やCM等放送メディアまでも含む一大キャンペーンを思い出す人も多かろう。11月19日に京都工芸繊維大学で開催されたシンポジウム「観光ポスターに見る日本の近代ツーリズムについて」(京都精華大学教授の佐藤守弘、京都工芸繊維大学美術工芸資料館准教授の平芳幸浩、DNP文化振興財団CCGA現代グラフィックアートセンター長の木戸英行のパネルディスカッション)では、ポスターのさらなる現在進行形が多面的に示された。(登壇者名は敬称略) ちなみに本展は、同大学のアートマネージャー養成講座と京都dddギャラリーの連携企画展。開学以降に同資料館が教育の手本用に収集してきた、近代西欧から現代までに渡るポスターの有す「歴史性」と、DNP文化振興財団の所蔵する現代日本のポスターにみられる時代の「先端性」が補完しあう、幸福なケミストリー。産学連携の良い事例となる展覧会であろう。[竹内有子]


会場風景

2016/11/18(土)(SYNK)

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