artscapeレビュー

須藤絢乃写真展 てりはのいばら

2017年01月15日号

会期:2016/11/09~2016/12/10

芦屋市谷崎潤一郎記念館[兵庫県]

少女漫画の登場人物を思わせるユニセックスな人物像や、プリクラやデコ文化に見られる変身願望を反映した写真作品で知られ、2014年には16人の行方不明の少女に扮した作品《幻影》で、キヤノン写真新世紀のグランプリを受賞した須藤絢乃。芦屋市谷崎潤一郎記念館で2度目の個展となる本展では、谷崎潤一郎の代表作『細雪』の4姉妹に自らが扮した作品6点を発表した。作品には、同館所蔵の谷崎の遺品や、かつて谷崎が住んでいた邸宅、船場育ちの須藤の祖母が大切にしてきた着物や小物も見られ、彼女が『細雪』を通して感じた阪神間モダニズムの時代と近代女性像が窺えた。作品はカラー写真だが、往年の総天然色映画あるいは初期のカラー写真の色調が採用され、時代を超越したマジカルな雰囲気に。和風のしっとりした世界観でも独自の作風が貫かれており、成長がしっかりと感じ取れた。なお、同館では今後も継続して須藤の個展をなう予定。次回の個展がいまから楽しみだ。

2016/12/10(土)(小吹隆文)

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