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artscapeレビュー

日本発 アナログ合体家電 大ラジカセ展

2017年01月15日号

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会期:2016/12/09~2016/12/27

Parco Museum[東京都]

さまざまな機能をひとつの装置にまとめたい、そして外に持ち出したいという欲望は、いまやスマートフォンという装置に集約されつつあり、そうした要求は必ずしも日本独自のものではないと思われる。しかしながら、かつて一世を風靡したラジカセの場合、日本の家電製品が世界を席巻していた時代の産物であり、それが「日本発アナログ合体家電」(本展サブタイトル)と呼ばれることに違和感はない。多機能製品は数あれども、ラジカセの場合はラジオ、FM放送を録音・再生する媒体としてカセットテープレコーダーが補完的役割を果たしていたこと、電池でも駆動でき、取っ手が付いてどこにでも持ち運びできたことが商品としてヒットした理由だろう。キッチュな合体家電と異なり、ラジカセはユーザーのニーズにフィットした製品だった。展示品は家電蒐集家・松崎順一氏が収集したヴィンテージ・ラジカセの数々で、それらのデザインの特徴を一言でいうと「男の子っぽい」。飛行機のコックピットを思わせるほどスイッチやつまみが多いのだ。会場でかつて筆者の父親が使っていたアイワのラジカセTPR-820(1978年)に再会したが、これほどたくさんのスイッチを父が使いこなせていたとは思えない。操作性のよさよりも、金属的な質感の外装、複雑な操作系が当時の(男性にとっての)「新しさ」「かっこよさ」だったのだと思う。展示されているラジカセのパンフレット表紙には女性アイドルや水着のモデルが起用されているものが多く、これもラジカセが男性向けのアイテムだったことを示していよう。ポータブルな家電という点では、昨夏に生活工房で開催された「日本のポータブル・レコード・プレイヤー展」が思い出される。レコード・プレーヤーの場合はプラスチック製のポップなデザインとカラーが印象的だった。コレクションにバイアスがあることは考慮しなければならないだろうが、両者のデザインの違いにはユーザー層の差、時代の違いがうかがわれる。[新川徳彦]

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2016/12/17(土)(SYNK)

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