2018年04月15日号
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artscapeレビュー

SLOW MOVEMENT『Next Stage Showcase & Forum』

2017年03月01日号

会期:2017/02/12

スパイラルホール[東京都]

スロー・レーベル(ディレクター:栗栖良依)のプロジェクトにSLOW MOVEMENTがある。2020年の東京オリンピック、パラリンピックや文化プログラムで活躍する障害あるパフォーマーを発掘・育成するためのプラットフォームで、サーカスアーティストの金井ケイスケを中心に組織された。本公演はこのプラットフォームによるもの。障害者と健常者がともに舞台を構成する二本の演目が上演された。障害のあるダンサーとしては、大前光一、かんばらけんた、森田かずよが出演した。筆者は普段、舞台芸術としてのダンス公演を中心に批評している者であるが、サーカス的な設えの舞台がもつ包摂力についてずっと考えながら見ていた。管楽器やベース、ドラムなどのミュージシャンとともに、ダンサーたちは客席から舞台に上がってくる。全員が白い衣装を身にまとい、目には隈取をしているなど、最初から「サーカス」的な陽気さが場内を包む。アビリティでダンサーたちは観客を驚かす。片方の足が義足の大前はバレエダンサーらしい高い跳躍と安定した着地が見事だし、かんばらも得意の逆立ち姿で観客を圧倒する。「スーパー障害者」というイメージで、本当に彼らは格好いい。興味深いと思うのは、ノリの良いサーカス的な設えは、いろいろなダンサーの個性を包摂する力があるだけではなく、観客の心を陽気にさせ、芸術と思うと難しく考えてしまうところを、柔らかく巻き込んでゆくのだった。そこには「できる」だけでなく「できない」までも包摂してしまうところがあって、公演直前にエントランスで大道芸のような場が設けられた時、ジャグリングにミスがあった。それでも、この場ではミスは厳しいジャッジの対象ではなく、「それもまたよし」といったような寛容さで迎えられていた。だからといって「なんでもあり」ではないのだろうが、それでも、こうした寛容さが生まれることは、舞台芸術を更新する結構重要な要素のように思えてくる。

2017/02/12(日)(木村覚)

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