artscapeレビュー

花岡伸宏 入念なすれ違い

2017年03月01日号

会期:2017/02/04~2017/03/05

MORI YU GALLERY[京都府]

彫刻というメディウムには、垂直性、重力の影響、モニュメント性など、宿命的に引き受けざるを得ない特徴がある。20世紀にはそれらに抗する動きとして、モビールやソフトスカルプチャーなど多様な造形が生まれた訳だが、花岡伸宏が彫刻に導入したのは、コラージュと可変性であろう。彼の作品には木彫(人物像が真っ二つに割れる、ずれるなどしたもの)のほか、材木、廃材、布、衣服、印刷物などがコラージュのように配されている。また、一度発表した作品も恒久的とは限らず、改変可能な構造となっている。彼の作品が彫刻でありながらドローイングのような軽やかさをまとっているのはそのためだ。本展で特に驚かされたのは、無造作に脱ぎ捨てた衣服を作品として提示していたことである。筆者は最初、花岡か画廊スタッフが脱いだ服を置きっ放しにしていると勘違いした。ここにはもはや定型すらなく、インスピレーションが一時的に固定されただけだ。彫刻が宿命的に持つ諸要素や、芸術全般が志向する完全性、永遠性といった縛りから軽やかに抜け出し、新たな表現領域を開拓したこと。花岡作品の価値はそこにある。

2017/02/04(土)(小吹隆文)

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