artscapeレビュー
瓜生祐子 展
2011年05月15日号
会期:2011/03/29~2011/04/17
neutron kyoto[京都府]
淡色系のやわらかい画面の印象と、鉛筆で描かれた細やかな輪郭線にただでさえ目が誘い込まれるのだが、私が女だからなおさらだろうか。ケーキやクリームあんみつといった食べ物のモチーフをのどかな山里や山脈の風景に見立てた作品世界がそれに輪をかけて気持ちをくすぐり、ついつい長いあいだ画面を凝視してしまう。アクリル絵の具でキャンバスにイメージを描いた上に綿布を貼り、それから鉛筆で線を描いているという画面の色彩は一見、染めもののような趣きもある。円形や四角形のキャンバスはそれぞれが食べ物を盛りつける器に見立てられていて、かわいらしくもあるのだが、ただそれだけではなく、甘い香りや食べ物が焼けるときの香ばしい匂いなど、食欲を刺激する嗅覚の記憶をも連鎖的に誘発する要素になっていた。
2011/04/10(日)(酒井千穂)