artscapeレビュー

澄毅「光」

2011年05月15日号

会期:2011/04/22~2011/04/28

Port Gallery T[大阪府]

その「写真新世紀大阪展」で佳作入賞者として作品が展示された澄毅(すみ・たけし)の個展が、大阪・京町堀のPort Gallery Tで開催されていたのでそちらも見てきた。
「光」と題されたシリーズは、A0の大判サイズのプリント2点とA1サイズのプリント15点で、壁にピンで止められている。澄の呉市在住の祖父は戦艦大和の建造にもたずさわった技術者で、広島の原爆投下も目撃しているのだという。その祖父の写真アルバムに貼られた写真を複写して画用紙にプリントし、被写体の輪郭をなぞるように小さな穴をたくさんあける。その裏側から光をあてて、それが白っぽい点の集合として見えてくる様を撮影した写真が、このシリーズの骨格を形成している。古い写真が現実の光に晒されることで、あらたな生命力を得て再生しているといえるだろう。さらに澄自身の身辺を撮影した写真を合わせることで、過去と現在、記憶と現実とが混じり合い、溶け合うような効果が生じる。同じテーマで制作された映像作品(約8分)も含めて、よく練り上げられたコンセプトがきちんと形になったいい作品だと思う。
ただ、会場のインスタレーションにはもう一工夫必要だろう。A1サイズのプリントは、大きさや展示の仕方がやや中途半端に感じる。もう一回り小さなサイズにするなど、アルバムのページをめくっていくような親密な雰囲気を大事にした方がいいと思う。

2011/04/23(土)(飯沢耕太郎)

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