artscapeレビュー

河合晋平博物館

2011年05月15日号

会期:2011/04/06~2011/04/12

大阪タカシマヤギャラリーNEXT[大阪府]

スプーン、ロールパン、ゴムチューブ、プッシュピン、電球など、その制作環境や身の周りにあるさまざまなものを進化する生命体に見立て、作品化して発表している河合晋平。百貨店内のギャラリーという、いつもとは異なる雰囲気の空間で個展が開催された。近年の個展では毎回展示されている、河合のこれまでの発表作品の歴史をひとつに纏めた《存在物体系系統樹》は、まるで自然科学系の博物館にある解説年表のようで面白いが、初期から最新作までが並んだ今展は、空間そのものがまさに博物館の展示室のように設えられていて、作家の世界観や作品のユニークな魅力がいっそう際立っていた。作品の細部を備え付けられた10数センチのルーペで覗き見るコーナーや、店のディスプレーさながらに美しく作品を陳列した壁面など、展示の工夫がすごいこともさることながら、電子部品も虫ピンも、作品化されたそれらがアクセサリーか装飾品の類いに見えてくるのも面白い。デパートの買い物客だろうか、初老の夫婦(?)が作品に顔を近づけて「奇麗やねえ、細かいねえ」と熱心に見ていたのが印象的だった。


河合晋平博物館、会場風景

2011/04/11(月)(酒井千穂)

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