artscapeレビュー
銀座地下街ラジオくん 声のアーカイブ展
2014年05月01日号
会期:2014/03/19~2014/03/26
KANDADA 3331[東京都]
「銀座地下街ラジオくん」とは、取り壊しが決定している銀座4丁目の三原橋地下街を取材したラジオ番組。本展は、学生放送局「ざぎんWAVE」が同地下街の店主や常連客、周辺の画廊主らにインタビューして採集したさまざまな「声」を紹介したもの。
展示は、しかし、実際に音声が再生されていたわけではない。その点は惜しまれるが、それでも文字や写真、記事、図面などによって語られた地下街への思いを読むと、そこが多くの人びとにとっての憩いの場であったことがよくわかる。三原橋地下街は、次々と資本が投入される銀座の街中にあって、例外的にかつての時代の空気を吸える安息の場所だったのだ。
こうした問題はいまに始まったことではない。銀座のみならず、全国の都市は、かつてもいまも、スクラップ・アンド・ビルドの論理によって急速に塗り替えられている。むろん、その速度に相乗りする類のアートがあってもいい。だがその一方で、その奔流に打ち込まれる楔こそアートとして評価しなければならない。なぜならアートとは支配的な見方とは異なる別の視点を提供するものであり、その視角から見たもうひとつの世界のありようを私たちに垣間見せることができるからだ。きらびやかな銀座だけではない、庶民的な銀座の街並みが実在しており、しかも多くの人びとに求められているという声を紹介した本展は、そうしたアートの働きを存分に示した。
2014/03/26(水)(福住廉)