artscapeレビュー
鈴木紀慶+今村創平『日本インテリアデザイン史』
2014年05月01日号
日本の「インテリアデザイン」がどのような土壌から生まれ出て発展していったのかという歴史を綴った、いままでにない書。欧米の文化が日本へ流入してきた「黎明期」の大正時代より、「開花期」の戦後から90年代までを扱う。この場合、「インテリア」は「室内空間」と換言できる。それなら「インテリアデザイン」とはなにか。本書によれば、1960年代初頭に発刊された『インテリア』誌上に掲載された記事をきっかけに「インテリア論争」──インテリアデザイナーとインテリアデコレーター(室内装飾家)は同じものなのかという問い──が起こったという。つまり「インテリアデザイン」という概念と、「インテリアデザイナー」という職能が確立へ向かうのは、60年代以降のことになる。60年代は、現代美術が「空間」や「環境」を対象にし始めて、新領域としての「インテリアデザイン」の空間表現に影響を与えた時期でもあった。そのようななかで「商業空間だってインテリアだ」と述べた倉俣史朗の仕事は、それまで想定されてこなかった対象の領域を拡張した点と、インテリアデザインの定着を──「アート」との協働をしながら──うながした点において注目される。だから、読者が読んで興味深く感じるのは、彼の登場以降の「開花期」だろう。最後には、監修者の内田繁とデザイナーの吉岡徳仁の特別対談があり、現代のインテリアデザイナーから見た課題・未来への展望などが生き生きと語られる。[竹内有子]
2014/04/20(日)(SYNK)