artscapeレビュー

驚くべきリアル──スペイン、ラテンアメリカの現代アート

2014年05月15日号

会期:2014/02/15~2014/05/11

東京都現代美術館[東京都]

「驚くべきリアル」というタイトルから、またアントニオ・ロペスなスペイン・リアリズム絵画を連想したが、ぜんぜん違う現代美術展だった。これは「日本スペイン交流400周年」事業のひとつで、スペイン北西部のカスティーリャ・イ・レオン現代美術館(MUSAC)のコレクションから27作家の作品を紹介するもの。マドリッドのレイナ・ソフィアでも、バルセロナ現代美術館(MACBA)でもないところが希少だ。映像や写真など姑息な作品が多いなか、巨大壁面を89枚の絵画で隙なく埋めたエンリケ・マルティの《家族》は圧巻。サイズの異なる正方形の板に油彩で家族のスナップ写真をサラサラッと描いたもので、なかに血まみれの子どもの絵もあって驚くが、これはキリスト教の儀式に由来するパフォーマンスで、血はフェイクだそうだ(もちろん絵だけど)。家族の絆が強く、カトリック色の濃いラテン系ならでは作品。もうひとつ、同じ部屋にあったサンドラ・ガマーラの《ガイドツアー(リマ現代美術館LiMacカタログ)》にも注目した。リマ現代美術館のカタログを1ページずつ描いているのだが、そんな美術館は存在しないし、もちろんカタログもない。架空の美術館をでっち上げ、カタログ(だけでなくグッズも)をつくっているのだ。たとえばジョアン・フォンクベルタの旧作のように、架空の物語に従って連作をつくる手法はよくあるが、写真やCGではなくアナログな絵によって再現するところがうれしい。

2014/04/04(金)(村田真)

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