artscapeレビュー

星玄人「STREET PHOTO EXHIBITION 18」

2014年05月15日号

会期:2014/04/11~2014/04/20

サードディストリクトギャラリー[東京都]

ストリート・スナップの面白さを、あらためて教えてくれる展示だった。星玄人はここ数年にわたって、サードディストリクトギャラリーを舞台に、「STREET PHOTO EXHIBITION」と題する連続展を開催してきた。しばらく足が遠のいているうちに、その数がすでに18回に達していたことに驚くとともに、その一貫したストリート・スナップへの執着が、独特の作品世界に成長しつつあることに感動を覚えたのだ。
今回の展示は、金沢、仙台、高崎、豊橋、熊本などの、いわゆる「地方都市」で撮影した写真を並べている。星はこれまで主に新宿歌舞伎町や大阪西成などをメイン・グラウンドにしてきたのだが、仕事の関係で地方に行く機会が増え、とりたてて気負うことなく、夜の歓楽街にカメラを向け始めたのだという。結果として、ストロボの光に照らし出されて浮かび上がってきたのは、昭和の空気感がそのままタイムカプセルに封じ込まれたような光景だった。ヤクザっぽい男たち、バーのママさん風の和服の女性、路上で仔犬と戯れる茶髪の女たち──いつもの気合いが入ったテンションの高さはあまり感じられないが、逆にうら寂しい、滅びつつあるものへの愛惜が、じわじわと目と心に食い入ってくる。
むしろ「地方都市」にこそ、現代の日本と日本人の縮図を見ることができるのではないかと思わせる、強い説得力のある写真群が形をとりつつある。この方向でもう少し掘り進めていくと、何かとんでもない鉱脈にぶつかりそうな気もする。

2014/04/20(日)(飯沢耕太郎)

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