artscapeレビュー

小川直樹 展

2014年05月15日号

会期:2014/04/14~2014/04/19

Oギャラリーeyes[大阪府]

人形だったのだろうか、背中に支え棒が取り付けられた小さな人たちに囲まれ女性が座り込んでいる光景を描いた《魔法使い》、まるで近未来映画の一場面のような《密猟》など、空想的な物語を想起させる絵画が印象的だった小川直樹展。といってもそれらは、突然出現したとりとめのない架空世界でもなければ、見たことのない異世界というイメージでもない。それはどちらかというと自分の位置からは観察できない死角や山の向こうにある風景に、思いを廻らすときのように、容易にこちらの連想を掻き立てていくごく日常的な感覚に依拠している。なんとなくだが、過去に見たことのある映画のワンシーンのような既視感を喚起するモチーフ、水面の波紋を思わせる背景、溶け合う色彩など、頼りなく揺らぐそれらの不安定な要素にこちらの記憶と想像力が刺激され、画面の奥へ続く世界(時間)へとどんどん誘われていくよう。題材も以前にも増して魅力的に感じられた今展。次回の発表も楽しみだ。

2014/04/18(金)(酒井千穂)

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