artscapeレビュー

柏木博『日記で読む文豪の部屋』

2014年07月01日号

発行日:2014年03月12日

出版社: 白水社
発行日:2014年03月12日
価格:2,200円(税別)
サイズ:四六版、250頁
近年、とりわけ小説における室内/インテリアをテーマに執筆している著者が、日本近代の作家たちの日記をもとに、「住まいへの意識」を考察した書。取り上げられるのは、夏目漱石・寺田寅彦・内田百・永井荷風・宮沢賢治・石川啄木・北原白秋の七人。彼らが自分の部屋や他者の室内をどのように記述したのか。著者は、日記と文学作品の世界を自由に行き来しながら、「住人の痕跡」である部屋の記述を読み解く。作家による眼差しの特色は、ヴァルター・ベンヤミン等の論考が援用されることで、厚みを増して分析されてゆく。同書は、明治から大正にかけての生活文化、社会文化的な様相を浮き彫りにするばかりでなく、読者にももうひとつの楽しみを与えてくれる。作家たちの著述を通して、シャーロック・ホームズのように探偵あるいは観察者として、その人物像を想像するという楽しみを。[竹内有子]

2014/06/15(日)(SYNK)

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