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琳派展XVI:光琳を慕う──中村芳中

2014年07月01日号

会期:2014/05/24~2014/06/29

細見美術館[京都府]

江戸時代後期に大坂を中心に活躍した絵師、中村芳中(?~1819)の展覧会。芳中の描いた屏風や図絵、扇面、木版などを中心に、尾形光琳による屏風や乾山による絵付茶碗、芳中と同時代に活躍した絵師らの作品が会場に並ぶ。琳派といえば、第一世代の本阿弥光悦や俵屋宗達から第二世代の尾形光琳と乾山へ、そして江戸琳派と称される第三世代の酒井抱一までの流れが思い浮かぶ。のびやかな形態の抽象化、おおらかで力強い構成、はなやかで優美な色彩を特徴とする、日本美術を代表する流派のひとつである。
芳中を琳派の一角に位置づけたのは《光琳画譜》(1802)である。琳派の特徴はたしかにみられるものの、第一印象は「やさしい」である。しかも、気抜けするほどに「やさしい」。梅も蒲公英も葵も、仔犬も鳩も鹿も、六歌仙も七福神も、皆のんびりほのぼのとした笑顔で、かつ形象はどこまでも丸い。相当の描写力がなければこのように描くことはできないとは思うものの、それを感じさせないほどに筆致はいかにも軽快で、なんの気負いもなく気楽に描いたかのようにみえる。さらに、芳中が得意とした技法、たらし込みが画面を和らげる。たらし込みは濃淡の異なる絵の具をにじませてむらをつくる塗り方で、俵屋宗達が生み出した技法というから琳派としても正当な技法なのであろう。
時代は、上方が華やいだ元禄期を終えて、江戸が主役の文化・文政期を迎えようとしていた。江戸の庶民はきりりと引き締まった粋を好み、滑稽や洒落、風刺をもてはやした。芳中は《光琳画譜》を刊行して間もなく帰坂し、生涯を大坂で閉じる。江戸での活動はわずかな期間であった。江戸を後にするとき、彼はなにを思ったのだろうか。どこまでもやさしい作風に、その人柄を想像せずにはいられなかった。[平光睦子]

2014/06/18(水)(SYNK)

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