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横尾忠則──続・Y字路

2015年12月01日号

会期:2015/08/08~2015/11/23

横尾忠則現代美術館[兵庫県]

本年9月に、第27回高松宮殿下記念世界文化賞(絵画部門)を受賞したことでも話題になった横尾忠則。2000年以降のライフワークとでもいうべき「Y字路」シリーズ作品の続編でもある本展では、相変わらず、彼の旺盛な実験精神を体感できた。Y字路とは、そもそも横尾が郷里に戻って撮影した風景写真に由来する。画面中央に浮かび上がる建物とその手前で二又に分かれる道、つまり伝統的絵画とは異なって二つの消失点をもつ絵画である。その二つの道先にはなにが待っているのか、見る者に不思議でことさら不穏な印象を与える。今回は、2006年以降に制作されたものを中心に、「温泉」シリーズ・全国の美術館でコスプレの公開制作「PCPPP(Public Costume-play Performance Painting)」をした作品と映像・「黒いY字路」シリーズ等、約70点が展示された。そのなかでも彼の実験魂がいかんなく発揮されていたのが、黒いY字路シリーズ。ホワイト・キューブならぬ、真っ黒に塗られたブラック・キューブの室内に、漆黒で絵画対象を故意に「見えないようにした」Y字路作品が並ぶ。この発想といい、伝統的な西洋美術のありようをあの手この手で「編集」してしまう才能は、デザイナーとして活動した経験をもつ彼ならではのものだろう。実際、「グラフィックデザインも絵画も、僕の中では区別がなくなった」と述べている横尾。80歳を迎える来年も、活躍がいっそう楽しみだ。[竹内有子]

2015/11/01(日)(SYNK)

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