artscapeレビュー
GKグラフィックス30周年企画展
2015年12月01日号
会期:2015/10/27~2015/11/07
Gallery 5610[東京都]
「綾」──美しい織物の表情──をテーマに、これからのコミュニケーションデザインの可能性を提案する展覧会。さまざまなメッセージが込められた牛乳パッケージの提案や、薄いディスプレイを搭載しインタラクティブに変化する未来のカレーのパッケージは、人とモノとのコミュニケーションの可能性を示す。「こえのかたち」という装置は人の個性や感情をテキストメッセージに反映させるもの。画面に表示されたテキストを読み上げると、音声に含まれる抑揚、ニュアンスによってその文字の視覚表現が変化するのだ。「COTOCATA」という積み木を使ったゲームは、2人のプレイヤーのうち、片方が手元のカードに示された形を言葉で指示し、相手はその言葉を頼りに積み木の箱から必要なパーツを選んで形を組み上げるもの。実際にプレイさせてもらったが、ものの形を視覚ではなく言葉で伝えることの難しさを実感すると同時に、どのような言葉を選べば相手に伝わるのかということを考えされられる、良くできたゲームなのだ。
パッケージ、ブランディング、CI、サインなどのグラフィックデザインを手がけるGKグラフィックスが、1985年にGKインダストリアルデザイン研究所から独立して今年創立30周年を迎えたことを記念して開催された企画。当初は過去の仕事を見せる展示も考えられたというが、このような未来を見せるデザイン展は2013年に世田谷美術館で開催された「榮久庵憲司とGKの世界展」と共通するGKらしさを感じる企画であった。周知の通り、今年2015年2月にGKグループの創設者・榮久庵憲司氏が亡くなった。本展示とそこに現われた未来は、偉大な経営者亡き後のグループのこれからを示すものと考えることもできるかもしれない。[新川徳彦]
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2015/11/18(水)(SYNK)