artscapeレビュー
琳派400年記念:琳派からの道──神坂雪佳と山本太郎の仕事
2015年12月01日号
会期:2015/10/23~2015/11/29
美術館「えき」KYOTO[京都府]
この秋、京都では、琳派400年を記念する展覧会が目白押しである。そんななか、琳派の継承者、神坂雪佳と現代美術の作家、山本太郎の二人展が開催された。
神坂雪佳の出品作品は、京指物の老舗、宮崎家具による家具や箱物、宮崎家具所蔵の図絵をはじめ、川島織物セルコン(旧・川島織物)による染織品などおよそ40点である。小さな飾り棚、華やかな金蒔絵の硯箱、多色使いの窓掛け用紋織、袱紗、団扇、屏風、短冊、茶碗など多種多様な品々にはそれぞれふさわしい図柄が配されており、雪佳が希代のデザイナーだったことをいまさらながら実感させられた。宮崎家具も川島織物も、明治期には西欧の意匠や技術を採り入れながら日本独自の室内装飾を目指した企業である。こうした企業と協力関係を維持するコミュニケーション能力もまたデザイナーの資質のように思われる。なにより、とくかく上手いのである。形象を単純化、簡略化することによってそのものをよりそのものらしく表現することを「便化」というが、雪佳の図案にはその妙味を見ることができる。
さて翻って現代美術家、山本太郎の作品は屏風や掛け軸、絵画などおよそ40点である。立ち雛にはキューピッド、杜若には玩具のアヒル、菊慈童には缶ビールなど、古典的な画題と現代的なモチーフとの組み合わせが見所だ。なかでも俵屋宗達の《風神雷神図屏風》を引用した《マリオ&ルイージ図屏風》は、その大胆な趣向が話題になっている。いま、京都国立博物館では俵屋宗達俵、尾形光琳、酒井抱一の描いた三対の《風神雷神図屏風》が75年ぶりに揃って展示されている。会場は違えど、第四の一対ということになる。
琳派の特徴のひとつはその洒脱さにある。軽く、あっさり、さっぱりと。雪佳の場合はそれが便化として表現される。一方、山本の場合は、洒脱というよりもむしろ洒落、晒れや戯れといったほうがふさわしいように思われる。[平光睦子]
2015/11/03(火)(SYNK)