artscapeレビュー
武器をアートに──モザンビークにおける平和構築
2015年12月01日号
会期:2015/10/17~2015/11/23
東京藝術大学大学美術館[東京都]
アフリカ・モザンビークで独立後の1975年から1992年まで続いた内戦によって国内に残された大量の武器を回収するために、武器を農具と交換する「銃を鍬に」というプロジェクトが行なわれた。集められた武器は爆破・解体され、その一部がアート作品の素材となって制作されたのが、今回展示されている金属彫刻の数々。解体された銃でつくられている椅子のほか、読書する人、楽器を弾く人などが表現されているのは、平和な暮らしへの転換をイメージしているのだろうけれども、いっそギターの代わりに銃を持たせて人間の愚かさを作品によって記憶させてもよいように思った。あるいは農具を持たせるのはベタに過ぎるだろうか。と書いたのは作品自体にあまり魅力を感じなかったことと、銃を鍬に代えるというこのプロジェクトがアートとどのように結びつくのかが不分明だったからなのだが、モザンビークという国とその苦難の歴史を知り、平和を築くためのプロジェクトを知らしめるという点において、展覧会という形式がとても有効であることを認識した。[新川徳彦]
2015/11/18(水)(SYNK)